【巨人】〝打倒カープ〟の思いあふれた⁉ 阿部監督「キラー・カーン」発言の背景

サヨナラ本塁打の丸(左)と握手をする巨人・阿部監督

巨人が28日の広島戦(東京ドーム)で延長10回の末、3―2でサヨナラ勝利を飾り、貯金を1とした。

最後に勝負を決めたのは、丸佳浩外野手(35)の5号ソロ。古巣にとどめを刺す背番号8の劇弾が右翼席に飛び込んだ瞬間、思わずベンチを飛び出したのが阿部慎之助監督(45)だ。これまで基本的にはどんな展開にもポーカーフェースを貫いていたが、試合後には珍しく興奮冷めやらぬ表情で「我を失って飛び出してしまいました」と振り返った。

降雨中止が今季ゼロのチームは、この日がレギュラーシーズン半分となる節目の72試合目。貯金ターンを果たすためにも、絶対に負けるわけにはいかなかった。そんな思いは指揮官の〝珍言〟にも表れた。

1点リードの9回二死の場面で守護神・バルドナードが暴投。一時同点に追いつかれたシーンについて阿部監督は試合後のテレビインタビューで「バルドナードは魔が差したのか、あれは多分(捕手が)キラー・カーンでも捕れなかったんじゃないかなと思います」答えた。

なぜか突然、かつて〝蒙古怪人〟として一世を風びした名プロレスラーのキラー・カーンの名前が指揮官から飛び出したことで周囲は一斉に顔を見合わせながら「?」。だがテレビインタビュー終了後に阿部監督が自ら「オリバー・カーンだったな」と訂正し、元ドイツ代表GKと混同していたことを釈明。要するに思わず言い間違えをしてしまったぐらい、冷静沈着な指揮官の興奮状態が続いていたということだろう。

チームにとって、広島との今カード3連戦は今季を占う〝天王山〟の位置づけ。敵地マツダスタジアムでは指揮官も公言する「鬼門」となっており、実際に今季も4敗2分けと未勝利のまま辛酸をなめさせられ続けている。

だからこそ、指揮官の行動には試合前から「打倒カープ」へ並々ならぬ思いがあふれていた。早出練習では自ら若手の打撃投手を務めた後、今度はバットを握ってロングティー、フリー打撃で現役時代をほうふつとさせるかのように次々とスタンドに強烈な打球をたたき込んだ。これにはチーム関係者が「監督も〝なんでみんな打てないんだ〟と歯がゆく思っているのでしょう」と指揮官の思いを代弁していたほどだった。

昨季8勝17敗と大敗した広島とは今季、これで4勝4敗2分けの五分。試合前には全選手を集め、猛烈なゲキを飛ばした指揮官の執念が初戦勝利を呼び込んだ格好だ。この勢いをどこまで持続できるか。29日のカード2戦目以降にも注目が集まる。

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