【北九州記念】前で立ち回れる馬を中心視 京大競馬研の本命はピューロマジック

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前で立ち回れる馬を中心視

6月30日(日)に北九州記念(GⅢ)が行われる。今年の夏は中京と小倉の開催順が逆になり、このレースは開幕週での開催となった。昨年のCBC賞、北九州記念を連勝したジャスパークローネや葵Sを見事な逃亡劇で勝利したピューロマジックなど多くのスプリント重賞好走馬が集結した。しかし例年通り、完全に能力が突出した馬はおらず、展開一つで着順が入れ替わる大混戦模様。非常に難解な一戦となる。

以下では、本レースが行われる小倉芝1200mのコース形態とそれに起因するレース質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まずは小倉芝1200mのコース形態を見る。向正面の2コーナーポケットからスタートし、初角までの距離は約480m。2コーナー地点が最高部のため、スタート後約200mは高低差約2mの下り坂となっている。その後の3~4コーナーも下り坂でスパイラルカーブとなっていて、最後に293mの平坦な直線が待ち構えているコースレイアウトだ。

まず注目すべきは初角までの距離が約480mとかなり長いこと、そしてスタート後下り坂になっていることだ。先手争いが長引きやすく、下り坂のためダッシュもつきやすい。スプリント戦で先行馬がそれなりに揃っていることがほとんどのため、序盤のペースは上がる。どのクラスでも前半600mは33秒台前半から32秒台で流れることがほとんどだ。

その後の3~4コーナーも下り坂のためペースは落ちにくい。またスパイラルカーブを採用しているため、スピードを保ったまま直線に入ると外に振られやすく、出来るだけラチ沿いを通ることが重要だ。序盤、中盤のペースは流れるが、ペースが緩む地点がないため馬群が縦長の状態で直線を迎えることが多い。加えて最終直線が短く、スパイラルカーブで先行馬が外に膨らむため、その外々を回した差し馬は距離ロスが大きくなりすぎて物理的に前まで届きにくい。よって前目で立ち回った馬が惰性で残る。これがこのコースが持つ特徴だ。

差し馬の場合は序盤、中盤での追走力が問われる上に、ラチ沿いを追走しイン差しをしてくる形でなければまず頭まで届かない。さらに今年は開幕週の施行であるため、このレース傾向は色濃くなると予想される。

この傾向は数字からも明らかだ。過去10年、開幕週(※連続開催除く)の小倉芝1200m、3勝クラス以上のレースにおける4角3番手以内の馬の成績は【10-8-6-22】勝率21.7%、連対率39.1%、複勝率52.2%、単勝回収率178%、複勝回収率131%と非常に優秀だ。ちなみに馬場が渋っても該当馬は変わらず結果を残している。馬場に依らず、前で立ち回れる馬を中心に印を打っていきたい。

続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が5頭(前走海外のジャスパークローネを除く)と出走馬全18頭に対し少なくない。またその他にも距離延長馬が3頭いて、テンが速い馬も多い。コースの特徴通り速い流れになることはほぼ確実だろう。この展開で恵まれるのはやはり前目で立ち回れる馬だ。その中でも出走馬同士の並びから出来るだけラチ沿いを追走できそうな馬を高く評価していきたい。

開幕週の高速馬場を生かせば

◎ピューロマジック
前走葵Sは8枠17番からスムーズにスタートしハナを取り切って逃げる競馬。スタート後の二の脚がとてつもなく速く、非常に高いスタートセンスを示した。この時の京都芝も決して高速馬場ではない中、前半600m33.2秒という超ハイペース逃げを打ち、後続を一切寄せ付けずに逃げ切る強い競馬で勝利した。今回はジャスパークローネなどテンの速い先行馬が揃っている。しかし葵Sから2キロの斤量減、先行意識の高い松山弘平騎手への鞍上戻りで持ち前のスタートセンスを発揮できればハナまで取り切れる。古馬との斤量差と小倉芝1200mのコース形態、開幕週の高速馬場を最大限に生かせれば簡単には止まらない。

◯ジャスパークローネ
本命同様、高いスタートセンスを持ち徹底的に先行できる一頭。近4戦の海外での成績は振るわないものの、国内実績を見れば今回のメンバーでは能力最上位だ。昨年は4歳馬で斤量の利もない中、CBC賞と北九州記念を逃げて連勝。スプリンターズSでも逃げてママコチャ、マッドクール、ナムラクレア、ウインマーベルといった現スプリント路線の一線級と差のない競馬を繰り広げた。ただ懸念点はやはり斤量。国内戦ではキャリア最重量の58.5キロを背負う。本馬は逃げた時に最も良いパフォーマンスを見せる。より斤量が軽くてテンの速い先行馬が揃った今回は持ち味が出せない可能性も考慮して対抗とする。

▲グランテスト
前走ライスシャワーCは内有利な馬場の中、8枠16番から好位にとりつき、外々を回しながら差し切る強い競馬だった。2走前の下関Sも外伸び馬場を最内から伸びて0.3秒差4着。近2走は着順、着差以上に評価できる好内容だ。中団前方から堅実な末脚を使えるのが強みで、まだ能力の底を見せていない。今回斤量は前走から3キロ減でキャリア最軽量タイの53キロと上積みに期待できる。先行意識の高い坂井瑠星騎手への鞍上戻りも良く、オッズ妙味が見込まれる。

△ナナオ
前走葵Sは外目3番手を追走し、直線では良い脚を使うも前2頭を捉えきれず0.2秒差3着。今回その1、2着馬もともに出走するが、この時は勝ち馬比較で2頭分外を回していたため、着差ほどの差はない。また本馬はマーガレットSでピューロマジックに0.4秒差をつけて勝利していることから、葵Sの上位3頭に大きな力の差はない。ピューロマジックは再度の逃げで展開が向きそうであるが、前走1頭分外を回してタイム差なしのペアポルックスには逆転可能と見る。こちらも斤量が前走から3キロ減でキャリア最軽量の52キロとなる。

×ペアポルックス
前走葵Sでは2番手追走のまま惰性で残し0.2秒差2着。ナナオのところで述べた理由から葵S組では3番手評価としたものの、前目で立ち回れることと斤量面から恵まれうると考える。

×テイエムスパーダ
本命、対抗同様、先手を主張できる一頭。前走は香港馬に出負けして先行できない競馬で度外視可能。昨年のセントウルSのように高速馬場でハナまで取り切れれば簡単に止まらない。

×ヨシノイースター
4走前まで出遅れ癖があったが、近3走では一変して中団前方~好位で安定して競馬が出来ている。春雷Sの相手関係を見ても、前で立ち回れれば好走するだけの力はある。

買い目は◎単勝1点、馬連◎◯▲△ボックス6点、3連複◎-◯▲△-◯▲△×12点で勝負する。(花田)

▽北九州記念予想印▽
◎ピューロマジック
◯ジャスパークローネ
▲グランテスト
△ナナオ
×ペアポルックス
×テイエムスパーダ
×ヨシノイースター

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。



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