蒲田駅「京急蒲タコハイ」騒動のその後…看板は外されてもポスターや音声はそのままだった!

イベントを伝えるポスターは堂々と貼られたままだった(東京・京急蒲田駅)/(C)日刊ゲンダイ

【話題の現場 突撃ルポ】#13

アルコール依存症問題について考えるNPOから「公共性の高い駅にはふさわしくない」との抗議を受けて、突如として駅入り口の看板が外された「京急蒲タコハイ駅」のイベント。京浜急行と缶チューハイ「タコハイ」の生産元であるサントリーのコラボ企画に水が差された今回の騒動だが、その後、イベントはどうなったのか。本紙記者はイベント最終日、現場の京急蒲田駅周辺を訪れた。

イベントは5月18、19日および6月8、9日に行われた「京急蒲タコハイ駅酒場」と、5月18日~6月16日に駅周辺で行われた「蒲タコハイ祭」の2つがメインコンテンツ。外された看板は両イベント共通のものだ。

記者が駅とその周辺を訪れたのは6月16日の夜。構内をうろついていると、「駅周辺の居酒屋でタコハイが楽しめる」とのナレーションが流れた。声の主は、イベントのイメージキャラクターを務めるタレントの田中みな実(37)。日本語と英語の2バージョンがあり、英語版の最後では帰国子女の田中らしく、「サントゥリー」という、ネーティブ顔負けの発音の良さが光っていた。

田中のナレーションは常時流れているわけではなく、数十分に1度のペースだったが、「看板が外された一方で、館内放送は平然と行われていた」という事実にはちょっとモヤモヤ……。また、構内を見渡すと、平然とイベントのポスターが貼られている。構内でナレーションが流れ、ポスターも貼られているのに、駅入り口の看板だけ撤去することに果たして意味があったのだろうか……。

京急とサントリーは今回の騒動をどう受け止めているのか

街中の様子はどうか。西口の商店街を歩くと、まばらながら、「このお店、蒲タコハイ祭に参加してるんだってー!」と書かれ、田中の顔写真が印刷されたポスターが貼ってある居酒屋があることに気づく。

うち一店に入ってみると、店内には外に掲示されたものと同じポスターが複数枚貼られており、いずれにも、読み込むとタコハイ1杯が無料になるQRコードが付いている。

タコハイを頼むのは当然として、ツマミをどうするか迷っていると、会計中の1組の客から「イベント、今日で終わりなんだねー。残念だなー!」との声が。どうやら、駅周辺では市民権を得ているようだ。

キャンペーン期間中だけあって、記者の両隣の客はやはりタコハイ。その他の客のテーブルにもタコハイが並ぶ。飲んでみると、普段、同商品を飲まない記者でもグイグイといけた。

京急とサントリーは今回の騒動をどう受け止めているのか。記者は両社に、「看板の撤去はどのような判断で行ったのか?」と「看板撤去後のイベント中に意見や抗議は寄せられたか否か」の2点を聞いた。

先に回答があったのはサントリー。「活動の一部においてふさわしくないといったお声をいただいたことも確かであり、真摯に受け止め対応いたしました」と、看板撤去の判断に至ったと理由を説明した。また、意見や抗議の有無については、「当社お客様センターに数件ご指摘をいただいております」「真摯に内容を検討」するとしている。

一方の京急は看板の撤去について、「主催企業さまのご判断となりますので、弊社ではお答えいたしかねます」と回答。また、抗議については「なかった」としたが、複数の意見が寄せられたと明かした。その上で、「さまざまなご意見があったことにつきましては、真摯に受け止め対応」すると答えた。

結局、イベントは最後まで続行された以上、看板は必ずしも外す必要はなかったのかもしれない。

(取材・文=坂下朋永/日刊ゲンダイ)

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