「共働きが7割」の実態は?共働き夫婦の家事分担の割合をみる

2024年5月に育児・介護休業法が改正され、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や育児休業の取得状況の公表義務付けなど、仕事と育児を両立させるための支援が強化されました。

現在では、共働き世帯が7割を超え、結婚したら仕事を辞めるといった価値観は消えつつあります。

それならば女性も男性と同等に働けるかというと…。理想と現実のギャップに悩む女性は多いようです。

そこで、共働きの実態を紹介するとともに、女性が仕事を続けていけるようにするにはどうしたらいいかを考えてみたいと思います。

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共働き世帯は7割超え

内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和6年版」から、共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移をみてみましょう。

【写真1枚目/全6枚】共働き世帯と専業主婦世帯の推移/共働き夫婦の家事時間はどうなってる?専業主婦との比較も次ページで

2023年の統計では、共働き世帯1206万世帯、専業主婦世帯404万世帯で、共働き世帯が専業主婦世帯の約3倍となっています。

割合にすると共働き世帯は約75%となります。

これだけを見ると、仕事と家庭を両立させてバリバリ働く女性が増えている印象を受けますが、次のグラフを見ると、共働きの実態が見えてきます。

共働き世帯数の推移

こちらは2021年までのデータになりますが、共働きが増えたといってもその内訳は、妻がパートで働いているケースが6割、フルタイムで働くケースが4割と、多くはパートであることがわかります。

フルタイムで働くケースは1985年からほぼ横ばいで、専業主婦の減り方とパートで働く妻の増え方が反比例していることから、専業主婦がパート勤務に置き換わったととらえることができます。

男女の年齢別の就業状況

この点について詳細を確認するために、男女の年齢別の就業状況を見てみます。

女性は正規雇用が25歳~29歳をピークに右肩下がりに減っています。

ただ、労働力人口は年齢に対してそれほど減っておらず、非正規雇用での就業が多いことがわかります。

女性は出産や子育てなどで、キャリアが中断される場合が多く、一旦仕事から離れると正規雇用での再就職が難しくなり、仕方なく非正規雇用で就業するケースと、仕事と家庭の両立が難しくなり、あえて労働時間に融通がきくパートなどの非正規雇用を選ぶケースがあります。

いずれにしても、男性と比べて非正規雇用の多さ、正規雇用の少なさがグラフにはっきりと表れています。

共働きが7割であっても、そのうちの6割はパートでの就業であり、パワーカップルのイメージであるフルタイムで働く共働きはまだまだ主流ではないことがわかりました。

家事・育児の役割分担

共働きの場合の、家事・育児の分担はどのようなものなのか、内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版」から、6歳未満の子どもを持つ夫と妻それぞれの家事関連時間を確認してみましょう。

6歳未満の子どもを持つ夫と妻それぞれの家事関連時間

2021年のデータをみてみると、専業主婦の場合は夫108時間に対し、妻は567時間、共働きの場合は夫114時間に対し、妻は391時間となっています。

分担の割合をみてみると、専業主婦は84%、共働きの妻は77.4%となっており、どちらにしても妻が7割~8割を担っています。

妻の就労形態での違いもみてみましょう。

同資料から末子の年齢別の夫の家事・育児時間を妻の就労形態で分けてグラフにしています。

末子の年齢別の夫の家事・育児時間を妻の就労形態

どの年齢でも、妻が非就労(専業主婦)の場合が夫の家事・育児時間が一番少なくなります。

全体の傾向として、末子の年齢が上がるに従って、家事・育児の時間は減っていきますが、0~2歳では、妻が正規雇用、非正規雇用の違いはほとんどなく、それ以降の年齢では、妻が正規雇用の方が夫の家事・育児時間は多くなっています。

しかし、それでも正規雇用の妻の家事・育児時間が圧倒的に多いことがわかります。

このことから、妻が正規雇用労働者として働いていても、依然として妻が家事・育児の大部分を担っているといえるのではないでしょうか。

女性が仕事を続けていくために

フルタイムで仕事をしながら子育てや家事もこなすのは、かなり難易度が高いといえます。

それは専業主婦が当たり前だった時代は、男性は仕事だけやっていればよかったことからもわかるでしょう。

今は男性も女性も仕事と家庭を両立させる必要があります。

しかし現実はまだまだ妻側の家事・育児の負担が大きく、妻の仕事を犠牲にして成り立たせている側面があります。

そこで、女性が男性と同じように仕事を続けていくための方法を3つお伝えします。

男性の育児休業の取得率を上げる

政府は2025年までに男性の育児休業取得率を30%にする目標を掲げています。

育児休業は、子が1歳に達するまで(保育所に入所できないなどの事情がある場合は最長2歳まで)、原則として2回まで取得が可能です。

両親がともに育児休業を取得する場合は1歳2か月に達するまでの間に1年間休業が可能です(パパ・ママ育休プラス)。

このほかに「産後パパ育休」として、子どもが生まれてから8週間以内に、4週間の休業を2回に分割して取得できる制度が創設されました。

この制度は育休とは別に取得できます。

2024年5月の育児・介護休業法の改正では、3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主の努力義務になります。

また、小学校就学前の子を養育する労働者は、請求によって残業免除を受けることが可能になります。

このような柔軟な働き方を実現するための措置が事業主の義務となるため、小さい子どもを持つ親は男性、女性関係なく、フルタイムでの柔軟な働き方が可能となっていくでしょう。

学童保育を利用する

学童保育を利用する

小学校就学前は、前述したさまざまな制度によって、仕事と育児の両立がしやすくなってきています。

しかし、小学校にあがると、これらの制度が利用できなくなったり、親が関わることが増えたりするなど、いわゆる「小1の壁」に直面します。

小1の壁を乗り切るには、学童保育(放課後児童クラブ)の利用がまず考えられるでしょう。

厚生労働省の「2022 年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」によると、放課後児童クラブのほとんどが長期休暇等も開所しており、18時半を超えて開所しているクラブは約6割となっています。ただ、

利用できなかった児童(待機児童)が全国で1万5180人いて、前年よりも増えていることは、改善すべき今後の課題です。

料金は高くなりますが、民間の学童保育を利用するのも一つの方法です。

民間の学童保育は、遅い時間まで預けることができ、なかには夕食の提供を行っているところもあります。

長い時間預かるため、習い事のようなカリキュラムが組まれている児童クラブも多くあり、料金がかかっても、別途習い事をさせることを考えれば、見合った料金といえるかもしれません。

ジェンダーロールにとらわれない

制度や環境が整っても、自分たちの意識が変わらなければ、仕事と家庭の両立はできません。

ジェンダーロール=性役割にとらわれて、「女性(男性)はこうあるべき」という考えを自分や相手に押し付けていないでしょうか。

数十年前は男性が育児休暇を取るなんて考えられない時代でしたが、今は男性が育児休暇を取るのは当たり前になってきています。

ただし「表向きは」という前置きが入る程度に、まだまだ風当りが強いのが現状です。

女性が男性と同じように仕事を続けていくには、一人ひとりの意識を変えていく必要があるでしょう。

すべての人が希望に応じて、仕事でも家庭でも活躍できる社会の実現に向けて、まずは自分の意識を変えていくことから始めたいですね。

参考資料

  • 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和6年版 全体版(PDF版)」
  • 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版 全体版(PDF版)」
  • 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版 全体版(PDF版)」
  • 厚生労働省「育児・介護休業法について」
  • 厚生労働省「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内」
  • イクメンプロジェクト「育児休業制度とは|男性の育休に取り組む|育てる男が、家族を変える。社会が動く。」
  • 厚生労働省「令和4年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」

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