【コラム・天風録】歩く人も安心な「天国」に

 国連決議は、何も物騒な核やミサイル絡みのものだけではない。6月3日の世界自転車デーもその産物で、今年は広島、愛媛両県知事が特別表彰を受けた。瀬戸内しまなみ海道を「自転車天国」に育てたことへの評価らしい▲2年前には気候変動対策として、自転車支援に関する国連決議も採択されている。温室効果ガスを吐き出す自動車が大きな顔をしない都市空間を、どう取り戻すか。自転車の乗り手と歩行者は本来、同志のはずである▲その両者が、角突き合わせていては話が進むまい。スマホを使いながら自転車に乗る「ながら運転」や酒気帯び運転について、警察庁は11月から罰則付きの違反とする方針という▲「ながら運転」は、乗り手の視界を極端に狭める。酒気帯び運転は、判断も動作も鈍らせてしまう。車体の重い電動自転車の普及が進んで、ぶつかった時の衝撃は増している。歩行者にとって「走る凶器」となりかねない。ひやりとした覚えのある読者も珍しくないのではないか▲気候変動を封じ込める。誰もが今すぐ移せる行動の一つが、車を運転する代わりに自転車に乗ったり歩いたりすることだろう。歩行者にも安心な「自転車天国」をもっと。

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