刀はどうマーケティング協業を行うのか 森岡社長がニップン「オーマイプレミアム」戦略を解説

株式会社刀は、株式会社ニップンとの協業についてメディア説明会を行いました。

元USJ森岡氏の「刀」がニップンと協業

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのマーケティングを担った森岡毅氏が立ち上げた株式会社刀。西武園ゆうえんちやハウステンボスなどのマーケティングを手掛け、自社のテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」をオープン、現在は沖縄に「ジャングリア」を建設中です。

テーマパーク以外でもマーケティング支援を行っており、丸亀製麺との協業などを手掛けてきました。ニップンは、2022年10月から協業を開始。約1年半の協業を踏まえた現在地を語りました。

刀が3年でマーケティング組織を作り上げる

ニップンの前鶴社長は、2020年に就任。これまでニップンは業務用市場中心の事業展開をしてきたと振り返り、家庭用事業も成長の柱にすべきだという危機感からマーケティングに取り組むことにしたそう。

刀との協業は「人的投資」だといい、ノウハウだけでなくマーケティング人材が残ることを重視し、創業以来培ってきた高い開発力にマーケティングをプラスしたいと協業を始めました。

協業期間は3年が目処。現在およそ半分が経過したところで、具体的な内容を公に明らかにしました。

社長は、刀を評価する点として、実践を通したノウハウの取得を挙げます。座学ではなく、刀のメンバーが実際に入って、実戦の中で知識や経験を得ることが大事だと思っているそう。社内では、広告だけでなく、企画・開発・営業担当まで巻き込んだ、消費者視点のマーケティング組織を作っているそうです。

トレーナーのためのトレーニングであり、刀が抜けた後も、トレーナーが新しく入ってきた社員にマーケティングを伝えられるように組織作りを行なっています。

「構造的に成功する」マーケティング戦略

刀の森岡社長は、具体的なマーケティング施策について説明しました。

ニップンの粉やパスタ関連事業は、成熟市場かつコモディティ市場だと指摘。特に粉は原材料に近くて差別化が難しいコモディティ市場だとし、これを再び動かせるのかというミッションと定義しました。

刀は、各地で成功する確率が高い戦略を選ぶことでマーケティングを行なっています。高い蓋然性で成功することを「構造的に成功する」と表現。競業の大企業がいる中でBtoC領域で勝とうとするとき、消費者の脳の中の構造を活用することだと指摘。

一方で、個別企業と協業したマーケティングについては、刀の思いつきで作るのではなく、協業先企業の持つノウハウと一緒に作ることを大切にしているそう。今回もニップンのメンバーと一緒に施策を検討していったそうです。

ニップンの競合が販売している商品の訴求点を分析。そこで、パスタ市場は簡便性ばかり訴求され美味しさが空いていることに気付き、実感できるおいしさを訴求することに着目。

簡便性とは具体的に「早くパスタが茹で上がる」というような効能。早く茹で上がる数分の差とおいしさを天秤にかけた際に、おいしさを取る消費者を狙いに定めました。

オーマイプレミアムが狙う市場

森岡社長は、成熟マーケットや巨大な競合がいるカテゴリーでは、ど真ん中が空いていることがあると指摘。自身の経験として、P&G時代、手に優しい洗剤ばかりの中で、油汚れに強いジョイが生まれたことを振り返りました。

ニップンのようなBtoB分野では協業に対して強い企業は、黒子としての製品開発力があり、開発力は卓越していると評価。複数のブランドが持って分散している構造の中で、リソースの集中で戦う戦略を掲げました。

ニップンで競争力を持っていたのは「オーマイプレミアム」でした。ブランドとして冷凍パスタ市場で1位ですが、月単位では負ける時もあり安定した1位ではないと分析。安定した1位にするための企画を立案しました。

「実感できるおいしさ」をテーマに、オーマイプレミアムを商品開発。新たに、乾燥パスタ市場でもオーマイプレミアムの新商品を発売しました。

冷凍パスタと乾燥パスタを通し、オーマイプレミアムを構築する「マスターブランド戦略」を実行しました。

これを受け前鶴社長は、冷凍パスタと乾燥パスタどちらも前年同期比で約2割の売上増、シェアも30ポイント程度増加したと実績を紹介。パスタ全体の市場が成長し始めているとし、おいしさという価値に真摯に向き合うブランドとして「オーマイプレミアム」を育てたいと締めました。

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