神戸に潜む「外国人不法就労」の実態 偽造在留カード、賃金ピンハネも… 生田警察署・外事課が動く!

神戸の玄関口・三宮にある兵庫県警の筆頭、生田警察署 藤田裕之外事課長が取材に応じた<2024年6月12日 神戸市中央区>

大都市を中心に外国人による不法就労、不法滞在という深刻な問題を抱えている。

出入国在留管理庁によると、2024年1月1日現在、日本国内での不法残留者数が7万9113人にのぼり、前年より12%増加している(2023年は7万491人)。
新型コロナウイルス感染拡大による入国制限が、一定程度緩和されたことも影響したとみられ、これに比例して不法残留者数も増加傾向にある。

【画像】生田警察署・外事課が動く!

国籍・地域別で最も多いのがベトナム(15,806人 前年比+2,098人)、タイ(11,494人 +1,945人)、韓国(10,869人 +361人)、中国(6,881人 +99人)などアジア系に集中している。
不法滞在者とは、正規の手続きで日本に入国したものの、在留できる期間を超えて日本に滞在している不法残留者や、偽造旅券などを使用して不法に入国してきた不法入国者を指す。
こうした、手段の異なる外国人不法滞在者のグループが、日常社会に潜んでいる。

神戸の玄関口・三宮では、東門街などの繁華街が、コロナ禍前のにぎわいを取り戻しているが、「人手不足」という深刻な現実も抱え、不法滞在者による不法就労の温床になりかねない危険性もある。

これらの地域を管轄する生田警察署(神戸市中央区)は、兵庫県内で最大規模。そして兵庫県警46署のうち唯一、外事課があり、日夜この問題に取り組んでいる。藤田裕之・外事課長に「不法就労、不法滞在」の実態とその対応について聞いた。

◆不法滞在で就労する外国人にとって、日本での労働対価は「割がいい」のか?
~検挙した不法滞在者の大半は、「日本で働いてお金を稼ぐために不法滞在していた」と供述している。在留期間を越えて日本に不法残留したり、「偽造在留カード」を使用して身分を偽装したり、技能実習先から逃げてきたりと、状況はさまざま。これらが一連の問題の対象になっている。

◆日本は“人手不足”が深刻。さまざまなシーンで外国人労働者を目にする。繁華街の場合、特に飲食店で外国人を雇用する側は、具体的にどんなことに気をつければいいのか?
~大きな落とし穴は数多く潜んでいる。偽造在留カードや、在留カードのコピーを使用して身分を偽装する外国人が多い。
事業者や雇用主のみなさんにお願いしたいのは、外国人を雇用する際には必ず在留カードやパスポートを確認していただきたい、という点。在留カードに記されている「就労制限の有無」という欄を見れば、働くことができるかどうかが確認できる。パスポートも同様で、日本に在留できる資格や在留できる期間が記載されている。実はこれらの確認を怠っているケースが多い。

◆偽造在留カードを見破る手段は?
~法務省や厚生労働省のホームページに掲載された在留カードの見方を参考にすることもできるが、出入国在留管理庁のホームページから「在留カード等読取アプリケーション」をダウンロードできる。このアプリケーションで、在留カード等番号を入力し、在留カードのICチップを読み取り、読み取った画像とカードの記載内容を見比べると、簡単に偽造しているかどうかを確認できる(ただしその場合、必ず本人の同意を得てから使用のこと)。

◆神戸・生田警察署の管内ではどういった状況なのか?
~歓楽街の安全を守るためのパトロールはもちろん、不法滞在者に関する情報を入手して検挙につなげるいった地道な活動から、風俗営業の営業所などへの立入りや不法就労を助長している店の検挙など幅広い活動を行っている。
雇用主も「バレなければ大丈夫だろう」という油断があると、犯罪行為を助長することになる。働くことが認められてない外国人を雇ったり、その雇用をあっせんした場合、「不法就労助長罪」など処罰の対象になる。
確実な身分確認をせずに不法就労をさせてしまうと、出入国管理及び難民認定法違反罪に問われ、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金の処罰対象となる。不法滞在者であることや就労資格がないことを知らない場合でも、尽くすべき確認義務を怠れば、不法就労助長罪に問われることがある。ここに大きな落とし穴が潜んでいる。

◆雇用する側にも不法就労を助長する原因が?
~今年(2024年)、生田警察署が検挙(不法就労助長)した人材派遣会社社員は、不法滞在などで就労資格がないベトナム人4人を神戸市内の会社に派遣していた。その際に在留カードの確認を行わず、外国人を雇用していた。この社員の供述から、「人手不足なので、とにかく働ける人が欲しかった。会社の売上げを落としたくなかった」という実態が浮き彫りになった。
このほか、中には、金儲けのために、不法滞在者の弱みにつけ込み、正規滞在の外国人より賃金を安くしたり、給料を“ピンハネ”するなど悪質な雇用主もいた。
放置すると、犯罪グループとして急速に巨大化する危険性が潜む外国人の不法滞在・不法就労。捜査と抑止に対応するため、兵庫県警察本部は2024年1月、「外国人総合対策推進本部」を設置、不法滞在や不法就労の実態把握を進めている。

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