高齢化、長寿化に伴い、法改正。高齢者になっても働き続けられる環境整備が進んでいます。しかし、高齢者の「働きたい」という思いと現実には、大きな差があるようです。みていきましょう。
65歳を超えても「なお働く」が多数派に
来年、2025年には、高齢者雇用に関して「①65歳までの雇用確保の完全義務化」「②雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小」と、2つの法改正がされる予定です。
高齢者雇用安定法は直近では2013年に改正され、定年を65歳未満に定めている企業は「①65歳までの定年引き上げ」「②65歳までの継続雇用制度の導入」「③定年制の廃止」のいずれかの対応が迫られました。
厚生労働省によると、99%の企業が「高年齢者雇用確保措置を実施済み」と回答。「①定年の引き上げ」を行った企業は26.9%、「②継続雇用制度の導入」が69.2%、「③定年制の廃止」が3.9%でした。
多くの企業が導入した継続雇用制度。60歳定年はそのままに、雇用形態は正社員から契約社員や嘱託社員に変更になるものの、そのまま働き続けることができるというスタイルが主流のようです。
また高齢者の「働きたい」という思いは、65歳を超えてもなおも旺盛。2021年、60歳以上男性の就業率をみていくと、「60~64歳」が82.7%、「65~69歳」が60.4%、「70歳以上」が25.6%。時系列でみていくと、2011年「60~64歳」は70.8%で、10年で10ポイント近く上昇、「65~69歳」は46.3%で14ポイントほど上昇、「70歳以上」は19.6%で6ポイントの上昇。この10年で「65歳を超えても働く人」が急激に増えたことが分かります。
IT大手で働き40年近く。60歳で定年、再雇用制度で65歳まで働いたというサラリーマンも、再雇用終了後も働き続けるつもりだといいます。
・60歳の定年時に手にした退職金は2,300万円ほど
・再雇用前は月収で58万円→再雇用後は月収30万円
・65歳からもらえる年金:夫21万円、妻14万円
「仕事なんてすぐに見つかる」と思っていた再雇用終了男性の勘違い
再雇用終了後も働き続けたいという男性。退職金やこれまでの給与、そしてこれからもらえる年金を見る限り、働き続けなくても余裕のように思えますが……なぜ?
――住宅ローンを完済したくて、退職金と貯蓄を使いました。老後は予期せぬこともありますよね。70歳くらいまでは働いて、貯蓄を増やしていかないと、とても安心できません
65歳を超えてもなお働いている人が周囲に多かったことも、再雇用終了後も働こうと考えたきっかけのひとつ。ただ想定外だったことが……。
――すぐに仕事がみつかると思ったんですけど
シニア向けの求人サイトを通じて仕事を探したものの不採用が続いたという男性。「ハローワークに行けば」と思い行ってみましたが、考えが甘かったといいます。
――警備とか、建設とか。そういう仕事は多いんですけど、事務はかなりの倍率で
男性はこれまでの経験を生かせるよう、事務職を希望しましたが、競争が激しい現実を知りました。厚生労働省東京労働局の資料によると、今年3月の求人倍率をみていくと、60歳以上で職業全体で0.6倍。倍率1.0倍を超えるのは、「保安職業従事者」3.58倍、「建設・採掘従事者」3.39倍、「サービス職業従事者」1.62倍。男性が希望する「事務従事者」の有効求人倍率は0.21倍で、かなりの競争率。
高齢者でも働ける環境は整いつつあるものの、仕事は限られてしまう現状。現役時代のように「キャリアを活かす」という選択はかなり厳しいようです。高齢者になっても働きたいなら「どんな仕事でもやってやる!」というガッツが必要なようです。
[参照]