「歌舞伎ビギナー」こそ大歓迎!大阪で人間国宝監修の名作を上演

人間国宝の歌舞伎俳優・片岡仁左衛門監修・指導のもと、上方歌舞伎の俳優たちが古典作品に挑戦する「晴(そら)の会」。今年で結成10周年を迎えた彼らが「日本三大仇討」に数えられる名作『伊賀越道中双六』を上演することに。6月28日に、11名の出演者中10名がそろった会見がおこなわれ、歌舞伎ビギナー大歓迎だという公演の内容について語った。

ヒロイン的な存在のお米(よね)を演じる片岡千壽、「歌舞伎未経験者」の来場を呼びかけた

■ ビギナーにもやさしい、途中に解説も

名作『伊賀越道中双六』の出演者ら(6月28日・大阪市内)

一度は触れたいと思っても、チケットが高額だったり劇場の敷居が高そうだったりで、なかなか足を踏み出せないという人が多い歌舞伎の舞台。この「晴の会」は、普段は大劇場で脇を固めている歌舞伎俳優たちが、厳選した上方歌舞伎の名作を、初めての人にもわかりやすいように改訂を入れたり、解説を加えたりして上演している。

大阪・天王寺駅直結の「近鉄アート館」で本物の歌舞伎の妙技を間近で、しかもほかの興行よりも安めの値段で楽しめるという評判を取り、今や同館の「夏の風物詩」とも言える舞台となっている。

■ すべて上映すると丸1日!?今回は選りすぐりの3話

「晴の会」旗揚げメンバーの1人で、今回は股五郎・十兵衛の二役をつとめる片岡松十郎は「結成10年は本当にあっという間でした」と胸の内を明かす

今回上演する『伊賀越道中双六』は、沢井股五郎という男に父を殺された武士・和田志津馬の仇討を描いた人間ドラマ。すべて上演すると丸1日かかるが、今回はそのなかから選りすぐった3幕(3話)を上演する。

なかでも、股五郎の行方を知る呉服屋十兵衛&志津馬に味方する雲助平作の人情あふれるやり取りと、思わず「ええっ!?」と口に出す驚きの展開が人気の『沼津の段』を、より味わい深く観ることができる内容にするそうだ。

平作役で出演し、「亀屋東斎」の名で改訂も担当している片岡千次郎は「登場人物の敵味方や恋仲がはっきりわかっていただけるよう、台本を7割ぐらい新しく作りました。旦那(仁左衛門)からは『仇討は派手にやりなさい』と言っていただいているので、(円形の)会場を360度生かした立ち回りをお見せできれば」と抱負を。

「亀屋東斎」の名で改訂も担当している片岡千次郎

同じく旗揚げメンバーで、ヒロイン的な存在のお米(よね)を演じる片岡千壽も「舞台とお客さんとの距離が近いので、役者の演技とか気持ちがすごく伝わりやすい。古典歌舞伎は難しいと思われるかもしれないけど、初めての人にも非常にわかりやすいと思います」と、特に歌舞伎未経験者の来場を期待した。

第九回あべの歌舞伎 晴の会『伊賀越道中双六』は、ほかに片岡當吉郎、片岡りき彌、中村翫政などが出演。公演は8月1日~4日に「近鉄アート館」(大阪市阿倍野区)にて。チケットは前売8000円、当日8500円で、高校生以下は1000円で鑑賞できる。6月30日から発売開始。

取材・文・写真/吉永美和子

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