【6月29日付編集日記】「う」

 平年に比べ、ずいぶん遅れたかと思えば、梅雨らしくない天候が続いている。傘を差す姿は見かけても、強い日差しを遮るためのもので、水不足の言葉もちらついてくる

 ▼雨の日が好きなカタツムリにとっては、受難の日々かもしれない。ブロック塀を伝う姿を梅雨の時期によく見かけるが、ここに集まるのには理由がある。殻を成長させるために必要な、炭酸カルシウムを摂取しているという

 ▼カタツムリの祖先は海にすんでいた巻き貝。植物学者の稲垣栄洋さんによると、海水には炭酸カルシウムが溶け込んでいるが陸上で取るのは簡単ではない。懐かしいふるさとの味を求めブロック塀に集まってくる―とエッセーで生態を紹介している。殻の中には生き抜く知恵が詰まっている

 ▼仙台管区気象台によると7月から3カ月の天候は、暖かい空気に覆われやすく気温は高くなる見通しだ。梅雨入りしたばかりというのに、早くも夏バテ対策が必要になってくるかもしれない

 ▼梅雨明けの時期と重なる土用の丑(うし)の日までは、まだ1カ月近くある。昔からうなぎのほか、梅干し、キュウリなど「う」のつく食べ物が効果的といわれてきた。体が悲鳴を上げる前に先人の知恵を実践してみては。

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