佐伯市に社会人野球チーム誕生へ 地場企業が共同出資、スポーツを通して新卒者確保【大分県】

全国各地からやって来た入団希望の学生を審査する高司健司さん(右)=3月下旬、佐伯市長谷の市総合運動公園屋内運動広場
全国各地からやって来た入団希望の学生を審査する高司健司さん(中央)

 【佐伯】佐伯市に来年春、複数の地場企業が出資する社会人野球チーム「佐伯市硬式野球団」が誕生する。全国的に大学新卒者の獲得競争が激化する中、スポーツを通して人材を確保するとともに、競技続行を希望する選手の受け皿となることを目指す。25人体制でスタートする予定。関係者は「野球の力で地域活性化したい」と意気込んでいる。

 「若者が都会に出て行ってしまい、求人に数百万円をかけても結果が伴わない」。佐伯豊南高野球部出身の高司健司さん(51)は市内の中小企業経営者から新卒者採用に苦戦する現状を聞いた。

 打開策として、大卒者や人数を確保できる社会人野球に着目。兵庫県警でチームを立ち上げた経験がある高司さんは昨年4月、運営母体の一般社団法人佐伯市ベースボールイノベーション協会を設立した。

 運営面で工夫を凝らす。団体スポーツは人件費や遠征費など多額の費用がかかるため、新球団は賛同する地元の中小企業を複数募り、1社当たりの負担を軽減する。選手は現役時、協賛企業で時短勤務をし、練習時間を確保。引退後に正社員となる。

 就職後、野球を続けたいと考えている学生側も新チームの発足を歓迎する。

 昨年度、全日本大学野球連盟に所属した4年生は約5800人。一方、卒業後にプロ野球12球団や独立リーグ、社会人に加入できるのはごく一部に限られる。

 内定を受けた第一工科大(鹿児島県)4年の須藤海人さん(21)=千葉県出身=は、「卒業後も野球を続ける道を探していた。働き先が複数あり、大学で学んだことを生かせるのもありがたい」。野球と仕事の両立、新天地での暮らしに期待を膨らませる。

 監督を兼任する高司さんは「強いチームづくりはもちろん、現役を終えた時にしっかりと働ける人材を育てたい。野球の普及と地域活性化を両立するモデルになれば」と話した。

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