超攻撃的スタイル蓮舫「とうとう3位墜落の危機」迫る石丸…右から左までバラマキ合戦の大炎上都知事選

7月7日投開票の東京都知事選が6月20日に告示された。各候補が激しい選挙戦を繰り広げる。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。

オールドメディアが報じてきた「小池百合子候補と蓮舫候補」という構図

経済アナリストの佐藤健太氏による<蓮舫「2位もダメで3位転落の危機」都知事選…石丸猛追「国政の代理戦争など馬鹿げたマネは是非やめてもらいたい」>(6月26日配信)記事が、大きな反響を呼んでいるようだ。筆者が観察している限りにおいては、配信後からしばらくしてYahoo!ニュースの総合ランキング1位の座を長時間キープしたようだ。

この記事が都知事選を揺るがすような大きな反響を得たのには、いくつかポイントがある。その該当箇所を摘出し、解説を加えていく。まず、この記事は、従来の新聞を中心とするオールドメディアが報じてきた「小池百合子候補と蓮舫候補」という構図ではなく、「蓮舫広報と石丸伸二候補」の支持率の差に着目している点だ。

<序盤から中盤にかけての都知事選情勢は「これまでの常識を覆す意外な展開」(民放テレビ局記者)になっている>

小池も蓮舫もそれぞれの支持層を固め、その変化はほとんど見られない

佐藤氏が入手した自民党調査によれば、6月1~2日の調査で蓮舫氏と石丸氏の差は24.9ポイント。2回目の調査(6月8~9日)では2位と3位の差は24.9ポイントと同じだった。<3回目の調査(6月15~16日)で“異変”>が生じて蓮舫氏との差が縮小しているという。

朝日新聞(6月22、23日)調査では、<石丸氏については「苦しい」と表現しているが、無党派層から「2割」の支持を得て蓮舫氏を上回っている>という点に着目。日経新聞の序盤情勢調査(6月21~23日)では、<「無党派層は小池氏が3割、石丸氏が2割を押さえている。蓮舫氏は1割の支持にとどまる」と報じている>と指摘し、<一部の調査では、石丸氏が蓮舫氏を追い上げて「僅差」になっているとも伝えられる。与野党対決の構図に持ち込むことを狙う蓮舫氏と、独自路線を突き進む石丸氏がどのような戦いを都知事選終盤にかけて行うのかも今回の見物だ>という。そして、これらの情勢から<政党やマスコミの情勢調査は「序盤」のものであり、まだ投票先を決めていない人も少なくない。ただ、各種調査から読み取れるのは小池氏も蓮舫氏もそれぞれの支持層を固め、その変化はほとんど見られていないこと>と分析をしている。

「赤ちゃんの声を聞いて喪失感を覚えた」百合子…「蓮舫は泣いたんです」

盛り上がりを見せる東京都知事選挙において、各新聞は世論調査を6月29日、30日にも改めて行うであろうから、この石丸候補の猛追がどこまでの勢いで進んでいくのかに注目が集まるというものだ。

一般論として、改革派を標榜し無党派層の支持を集める候補者は、選挙終盤になって得票が伸びる傾向が強い。となれば、小池候補や石丸候補は終盤に行くに従って、蓮舫候補よりも伸ばしていく可能性がある。

選挙戦序盤が終わって振り返ると、小池候補の用意周到な準備に驚かされるばかりだった。序盤で、「AIゆりこ」を登場させると、自身のアラビア語を話す動画や「40代の頃に子宮筋腫が見つかり、子宮を全摘出しました」「正直、手術直後は隣の産科から聞こえる赤ちゃんの声を聞いて喪失感を覚えたものです」と告白する動画(6月19日)で注目を集めている。特に、この子宮全摘出の告白は、性の涙を誘うなどとSNSで話題になり、蓮舫候補を大いに刺激した模様だ。

翌20日に、応援演説に立った立憲民主党の辻元清美代表代行は「蓮舫は昨日、泣きました」と切り出し、「20年間、国会議員として尽くした力を今度は生まれ育った東京のために使いたい。だから立ち止まるわけにはいかない。次のステージに送り出してほしい…と言って、蓮舫は泣いたんです」「泣いた蓮舫ですけど、並々ならぬ決意でここに立っている」と「泣く蓮舫」のアピールに余念がなかった。

菅野志桜里「女性候補の応援演説にありがちで、私は嫌だった」

こうした選挙戦での「涙の蓮舫」のアピールについて、元衆院議員の菅野志桜里氏は「女性候補の応援演説にありがちで、少なくとも私は、候補者だったときすごく嫌だった。『強そうに見えても私の前で泣きました。彼女も人間なんです』アピールはありがた迷惑」とFacebookで批判をしている。

菅野氏の批判はその通りだと思うが、筆者は小池候補の子宮全摘出エピソードを10年以上前にも聞いたことがあり、当時と比べて非常に話が洗練されてきたな、という印象を持つ。女性有権者の心を揺さぶる「あざとい」話なのだが、それをあざとく見せないプロの手法を小池候補は身につけているということだろう。どこまでもしたたかな小池候補の術中に蓮舫陣営はハマってしまったようだ。

右から左まで主要候補すべてが「学校給食費無償化」を掲げている

それにしても、右から左まで主要候補すべてが「学校給食費無償化」を掲げている、小池候補についてはすでに実施しているという、バラマキ選挙になってしまっていることに、私は強い危機感を覚えている。かつて、維新の共同代表である吉村洋文大阪知事が「給食費無償化は共産党の主張だよ。ちょっとひどい。」(2019年3月18日、Xへの投稿)と批判していたが、まったくその通りだ。

無償化とは全額を税金で負担するという意味だ。自分の子どもの食べる食費をなぜ、自分たちで出すべきだという当たり前のことがわからないのか。

まず、すでに貧困家庭は給食費を払う必要がない。そして、無償化(実態は税金)によって、サービスの質が低下するのはあらゆるデータや過去の歴史が物語っているファクトだ。どうしてサービスの質が落ちるかについてはさまざまな要因がある。その一つは、自分たちで支払ったものについては、コストとパフォーマンスが把握しやすいが、公金から支出されれば、この給食費がいくらかかったのかが見えにくくなってしまう。だからこそ、維新の吉村知事の「給食費無償化は共産党の主張だよ」という指摘は正しいということだ(吉村氏はなぜか今になって給食費を全額税負担を本格実施させていっている)。

なんでもかんでも税金で無料にしたところで、現役世代がその支出を払わされる

なんでもかんでも税金で無料にしたところで、結局、現役世代がその支出を払わされるのである。給食費を税負担することが「次世代への投資」という政治家が増えてきたが、論理的(その税金を納めている多くは現役世代なのだから)にもありえない。子どもの給食もまずくなる。石丸候補にいたっては、安芸高田市でせっかく支出を絞ったのに、そこでできたお金をそっくりそのまま給食費に注ぎ込んでしまったわけだ。日本は、共産主義の国ではないのだから、自分の子どものごはんは自分で負担すべきだろう。

蓮舫候補が、小池知事のムダ使いを批判できているのは、プロジェクトマッピングぐらいなものではないだろうか。蓮舫候補の話を聞いていると、あらゆるものを税金を投入したり、規制を強化することで解決を図ろうとしていて、頭が痛くなる。

若い政治家がいいとか、女性がいいとか、どうでもいい

現時点で2番目の候補が、ムダ遣いや経済成長に絞って、小池候補を追い詰めてくれたら、本当にいい選挙戦になったのに。小池候補、蓮舫候補、石丸候補それぞれが、アカデミー賞でも狙っているのかというような劇場型の選挙戦になってしまったのは非常に残念である。若い政治家がいいとか、女性がいいとか、どうでもいい。言い方はかっこいいとかどうでもいい。政策でグイグイ争ってほしい。

小池候補の優位は揺らがないままだが、他候補においては、これからの終盤戦、プロジェクトマッピングのムダ遣いは、ディベートなどを通して撤回させてほしいものである。

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