川路利良(6月29日)

 川路広場と呼ばれる場所が警視庁の警察学校にある。入校した警察官が敬礼の仕方や部隊行動などを日々学ぶ。日本警察の父、川路利良の像が使命に燃える若者を見守る▼川路は明治時代初期に警察制度の創設に尽くし、初代大警視(警視総監)に就いた。警察官の心得をまとめた「警察主眼」に信念がにじむ。〈人民の為[ため]には勇強の保護人なれば、威信なくんばある可[べか]らず〉。国民を守る強い警察官は威光と信望がなければならない、との教えを宿す像は川路の出生地、鹿児島県の県警本部前にもある▼警察庁は鹿児島県警への特別監察を始めた。元県警幹部や現職警察官が逮捕された事態を重く見た。事件隠蔽[いんぺい]の疑いも浮上する。福島県警でも逮捕者が出るなど、全国で不祥事が続発している。大阪地検の元トップにも、あるまじき嫌疑が持ち上がる。何たるありさまか。梅雨空に桜の代紋が泣く。菊のバッジが曇る▼川路は旧薩摩藩士で、戊辰戦争に従軍した。対峙[たいじ]した会津藩の佐川官兵衛と新選組の斎藤一は後に警視庁に入り、川路の意を継ぐ。官兵衛らは威信を汚す後進に憤っているに違いない。ならぬことはならぬ。元来、子ども社会の教えのはずなのだが…。<2024.6・29>

© 株式会社福島民報社