【盛り土問題】実効性さらに高めて(6月29日)

 盛り土規制法による規制区域の指定が、今秋までに県内全域で完了する見通しとなった。区域内に一定以上の面積や高さ、傾斜がある盛り土を造成する場合、知事や中核市長の許可が必要になる。不法行為を未然に防ぐ法的枠組みの実効性を高めるため、監視体制を強化すべきだ。

 盛り土は場所や目的によって複数の関連法で規制されていた。これを補完する形で、県と市町村は条例を設けて危険な盛り土造成を抑えてきた。静岡県熱海市で2021(令和3)年7月に起きた大規模土石流事故を契機に、全国一律の基準で規制できるよう法律を抜本改正し、罰則を条例より強化した規制法が昨年5月に施行された。

 市街地や集落、その周辺など人家がある場所であったり、離れていても地形といった条件から人家などに被害を及ぼしたりしかねない場所を規制区域に指定する。

 西郷村と矢祭町の民家近くに大量の土砂が搬入されていることが昨年になって判明した。当時は県、両町村とも独自の規制条例を設けておらず、西郷村が12月に初めて制定した。県は今年3月、規制法に基づき西郷村と矢祭町で区域指定した。法律に先駆けて栃木県は1999(平成11)年、茨城県は2004年に独自条例を施行している。本県でも先手を打った対応がなされていれば、大量の土砂の持ち込みを許す事案を防げた可能性もあるだろう。

 県は規制区域の指定に合わせ、県内七つの建設事務所に専属の監視員を1人ずつ配置する。無許可の造成が行われていないかどうかなどを確認する。監視体制のさらなる強化に向け、市町村や県警との連携に加え、ドローンや人工知能(AI)などのITの活用も検討してはどうか。24時間の対応も可能になる。

 工事発生土の保管場が県内に少ないとの指摘も建設業界から出ている。県は昨年度、下郷町の2カ所で公設保管場の運用を始めた。「仮置き」の位置付けで、最終的には再利用されるが、保管は県の公共工事の発生土に限られる。

 周辺環境に十分配慮し、民間の残土受け入れ地の状況も見極めた上で、将来的には市町村などの工事で出た分の受け入れも考えてもらいたい。さらなる不正防止の下地にもなる。(渡部総一郎)

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