磐田内定の関西大DF吉村瑠晟が秘める特大のポテンシャル。日本代表クラスの選手から得た学びは?「話を聞いているだけで...」

今年4月に2026年度からのジュビロ磐田入りが発表された関西大DF吉村瑠晟(3年、神戸弘陵高出身)の売りは、他を圧倒する身体能力の高さ。181センチの大型レフティというだけで魅力十分だが、50メートルを6秒台前半で走るスピードとジャンプ力も兼ね備えた選手はなかなかいない。

本人も自らが秘めるポテンシャルの高さは自覚しており、こう口にする。

「日本代表に入って活躍するのが目標。自分は左利きで、身長とスピード、身体能力がある。そうした素材を無駄にしないようほかの部分にも気を遣っていきたい。三笘薫選手や冨安健洋選手みたいに海外のビッグクラブでも主力になれるよう頑張っていきたい」

6月26日に行なわれた関西学生サッカー選手権大会でも能力の高さを随所で垣間見せた。

5月末に行なわれた天皇杯1回戦のカターレ富山戦で肉離れを発症したため、準決勝の同志社大戦はベンチからのスタートとなったが、後半12分から出番が到来した。

「試合勘を取り戻すためにも自分で仕掛けたり、ボールに触る回数を増やして、自分の特徴を出そうと考えていました。負けていたので攻撃の部分で違いを見せることができればと思っていました」
意気込み通り、機を見ては左SBの位置から力強い攻撃参加を披露。チームは1-3で敗れたが、改めて彼が持つ可能性の高さを感じる一戦となった。

高校2年生の冬にアタッカーから左SBにコンバート。その半年後にはFC町田ゼルビアの練習に参加するなど、高校時代からサッカー選手としての素材感を評価されてきたが、大学に入ってからは持ち味をより上手く発揮できるようになってきた印象がある。

以前は足もとの技術に自信がなく、関西大に入学した当初もビルドアップでのミスが多かったという。失ったボールを取り戻そうと守備に体力を使った結果、持ち味である攻撃参加に力を割けなかったが、弱点の改善が進んだ昨年からはAチームに定着していった。定位置を争ったDF吉本武(現・FC琉球)に負けないよう肉体強化にも着手した結果、後期からはレギュラーに定着。10月には先輩選手とともにヴィッセル神戸の練習参加も経験した。

昨年、J1で優勝したチームのレベルを肌で感じ、吉村の成長速度は加速していく。

「大迫勇也選手や武藤嘉紀選手など日本代表レベルの選手と一緒にプレーしたことで、意識が変わった。調子が上がってきて、満足している自分もいたのですが、日本代表のレベルを知ることでもっと上を目ざさなければいけないと思えた。だから、インカレまでの間に得点もアシストも重ねることができた。そこが認められて、ジュビロに呼ばれたと思う」

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今季開幕前には磐田のキャンプに参加。プレーレベルの高さ以上に実感したのは先輩たちが見せるピッチ外での立ち振る舞いだったという。

「ベテランが言う言葉は僕らが喋るより重みがあって、説得力もある。そうした生活の部分での意識は今まで自分が大学でサッカーをやっていた時とは違ったので、より意識するようになった。私生活がサッカーにどう繋がっていくか。パフォーマンスの部分をもっと意識するようになった」

なかでも学ぶことが多かったのは、GK川島永嗣とMF山田大記の2人からだったと明かす。

「川島選手とは筋トレの際に少し話をさせてもらったのですが、どこの部分を鍛えるかまでストイックに筋トレをしていた。大記さんはサッカーを伝えるのが凄く上手い。一緒に試合に出させてもらい、『ここにこういうパスが出せるから、こういう動きをして欲しい』と言語化が上手くて、話を聞いているだけでプレーが整理できて、成長に繋がった」

争奪戦になる可能性は高かったが、オファーを受けてすぐ磐田入りを決意したのも先輩の影響が大きいという。

「在学中にプロの世界を経験するのと、卒業してからプロに行くのではやっぱり違う。ジュビロの先輩である植村洋斗くんも3年生でプロ入りを決めたから、プロにすんなり入れて開幕からスタメンを掴んでいると思う。練習に参加し、試合にも出させてもらえれば、自分の成長スピードももう一段階上がると感じていたので、もっと先の自分の成長した後を見据えて、在学中に決めました」

誰もが認めるポテンシャルの高さを大学サッカーの舞台ではなく、プロや世界の舞台でも披露する日はそう遠くないはずだ。飛躍の準備は整っている。

取材・文●森田将義

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