【タカオカ解説】天皇皇后両陛下が国賓待遇で英国訪問 車やホテルだけではないロイヤルなおもてなし

(高岡達之 特別解説委員)

天皇皇后両陛下、国賓としては26年ぶりのイギリス訪問中です。(日本時間6月24日午後)

エリザベス女王陛下がお亡くなりになった時にも行かれてますが、あれは国賓というのではなく、お悔やみですので、国賓としては26年ぶりということなんです。

もちろん友好親善です。陛下に行っていただくということはですね。皆さんは、イギリスよく知ってるよ、聞いたことがある。しかし、意外に皆さん知らないこともあるんですよ。ということで今の日本とイギリスの関係は、『ロイヤルだけではなくて』いろいろあるのでございます。

世界で王室を維持してる国は、もうそんなにないんですね。ですから向こうもですね、イギリス側も、やはり王室を維持しておられますので、そういった意味では、双方の一つの財産ですよね。

ご到着のシーンですが、やっぱりイギリスって今大変なんだなと思いますが、政治家の姿が全然なかったのお気づきですか?スナグ首相がいません。イギリスはいま総選挙中でございます。日本だったらちょっと考えられないですね。総選挙の最中に国賓がお見えになるのかと。

イギリスは、全然そこが常識が違っておりまして、『国王陛下のゲスト』です。そんな政治家が急に解散しようが何しようが、それは関係ないという

ということでもあります。政治が、こういったロイヤルの交流を利用しないようにということもありまして、スナグ首相は公式行事には出てこないということになっております。

そこで、イギリス側と日本側、双方の財産と言いましたけれども、お互いの配慮があります。

■「国賓待遇」車のおもてなし

到着のところの、車の写真ですが、チャールズ国王から私の車貸しますと。イギリスの最高級車、ベントレーのリムジン。これは王室の車ですが、これで移動してください。

■「国賓待遇」旗にも配慮

実はこの上、えんじ色のバックに、菊の御紋がついてるんですが、日の丸じゃないことにお気づきかと思いますが、つまりこれ天皇の旗です。これは、なかなか、陛下がお乗りになる車しか見ることがない、これをつけております。

そして、英国ではこういうことが大事にされます。『バナー』と言います。携帯でいろいろSNSなどやられる方は、広告かとおっしゃるかもしれませんが、違います。

根本的に、このロイヤルが使う『バナー』というのは、『旗印』のことを意味します。そういう意味でも、日の丸ではなく天皇旗であることは、天皇皇后両陛下をお迎えしてるという配慮が、ここにも見えるわけであります。

■「国賓待遇」ホテルのおもてなし

お泊りになるホテルの方をちょっと見てみましょうか。こちらですが、ホテル「クラリッジスロンドン」という風に言います。一泊約1200万円の部屋もあり、最上階が全部スイートになってます。ただ天皇陛下がここにお泊りになるかどうかはまた別の話でございます。

ここはですね、こう言われております。バッキンガムの別邸と言われておりまして、大変な歴史をもつ、200年を超えようかという歴史を持つホテルなんです。世界の王室がお泊りになります。

この王室のホテルの名前を非常に高めたのは、こういうエピソードです。『ベッドの下の土』というので世界的に有名になりました。

■『ベッドの下の土』で有名に

第二次世界大戦中、ヨーロッパの王族はみんな戦争を避けて避難してきた。日本では疎開と言いますが、ロンドンにここで泊まられたわけですね。その中にユーゴスラビアの王妃がいらっしゃって、この王室がお子様を出産するということになった。そうするとやっぱり王族の誇りですね、自分の国の跡継ぎは自分の国の領土で産みたい。

そこでユーゴスラビアの土をわざわざ持ってきて、そのユーゴスラビア王妃のベッドの下に敷き詰め、そして時のチャーチル首相はですね、「ここを今ユーゴスラビアの領土とします」という風にイギリスが配慮をして、お産みになった。

このような大変な信頼を得ているホテルにお泊まりになるわけですが、行ってみたいですよね?見てみたいですよね?イギリスってのはねやっぱり伝統と新しいものが一緒なんですね、『ネット予約』も可能でございます。

ただしアフタヌーンティーというお茶でございます。今の通貨レートでシャンパン抜いていただいて、お一人様1万8000円でございます。90日前から受け付けております。

今回ですね、もうひとつ注目をされるのが、天皇皇后両陛下が外遊される時ってのは、ここです『勲章担当』さんっていうのがちゃんとついてるんですよ。これ大変なんですよ。相手の国も王室ですから、ちゃんと場所と格にあった勲章を持っていかないといけない。1個や2個じゃないんですね。かつては忘れてきちゃったっていうことがあって、日本からわざわざ持っていったという話があるぐらいです。

■勲章にみる日英の絆

これ日本での天皇陛下即位の時の、日本での最高位の勲章です。こちらは上皇様がつけておられますけども、ガーター勲章です。このブルーの斜めとここについてます。これ全部セットになってます。これイギリスでの最高位の勲章なんです。

これをいただく可能性が、極めて高いと言われています。国賓ですから。いただきますとなんと日本の皇室だけ『5代連続』になります。明治天皇、大正天皇、昭和天皇、上皇様、そして今上陛下。こんな扱いを受けてる王室、皇室は我が国だけでございます。

一方で、イギリスというのは、伝統だけではないですね。本当に時のタイミング、世の中に合わせてどんどん制度を変えていく国であります。では、そもそもイギリスとはどんな国なのか?

■イギリスってどんな国?

地理お詳しい方は知ってますね。イギリスなんていう国名は基本的にはないんです。グレートブリテン及び北アイルランド連合国っていうのを、英語にしたのが標準のイギリスと言われるものなんです。

実は公用語が言われてるものだけでも、4つあると言われております。ここにゲール語という言葉も入ります。イギリスはですね、やっぱり時代に合わせるんですね。2022年に『新しい公用語』が一つ増えました。

これはなかなか皆さんも想像つかないと思いますが、『BSL』と言います。日本語で翻訳をしますと『手話』のことです。「ブリティッシュ・サイン・ランゲージ」と言います。

つまり英国は、こういったハンディを持っておられる方々にも、幅広く条件を一緒にして、社会生活を送っていただこうということで、ちゃんと法律で決められてます。ですのでBBCなんかはイギリスのニュースは必ず手話がつくということになっております。

とは言いながらも、日本も頑張っております。日本の企業が新たに進出しているのは食べ物です。『うどん ラーメン カレーライス』、丸亀製麺、博多一風堂、CoCo壱番屋。ロンドンでは行列ができるぐらいの日本の存在感もあるようでございます。

日本は、『安保をめぐって大変な接近』をしております。これやっぱり、ウクライナのこともありますし、中国の太平洋での大きな力を見せてきてるってこともあります。

■日英協力のウラで…

2021年これウクライナの前になりますけれども、あのイギリスの空母がはるばるインド洋を回って日本に来ました。ご注目をいただきたいのは、これなんです、2022年、海上自衛隊の練習艦『かしま』という船です。

この『かしま』がイギリスに行ったことに、非常に意味がありまして、もちろんイギリスのご招待です。これは将来の海上自衛隊のイージス艦の艦長とか、護衛艦ほかの艦長とか、司令官とか、『未来のリーダー』が、研修の最後の仕上げで乗る船であります。

この『かしま』がイギリスまでいって、イギリス海軍と合同演習やったんです。ということはイギリスは常にやっぱり未来も見てるわけで、未来の何か有事があった時に、あの時お世話になりましたねという環境を、この時に築いておこうとこうと、イギリスはちゃんと考えていたわけですね。

そして日本は、いま『世界中の情報』、イギリスは強いんですけども、さらに頼りにしております。というのは、世界中の船の運賃と、それから次に何かどこかの地域で、紛争が起きるかもしれない、イギリスは2つ知り得るものを持ってます。

船の運賃、これ毎日出る『バルチック海運指数』と言います。本日付けの世界中の危険も、油の値段も全部入れて、世界中の貨物船タンカーのお値段がいくらか、これ毎日出るんですね。

それから『ロイズ』は制限のない保険で有名ですが、これは保険市場のことも指しますし、会社のことも指しますが、ロンドンにあります。ここは世界中で、次に火の手が上がりそうな危険なところ、テロがありそうなところを、毎日調べてるんですね。こういったところも日本は十分あてにしてるわけであります。

改めて申し上げておきますが、イギリスという国は実は核保有国です。国連の常任理事国です。世界の大国だと皆さん思ってますが、『日本より国土も小さく、人口も半分ぐらい』なんですね。

今回、陛下に行っていただいている、ロイヤルのつながりもそう、王室の存在感もそう、世界で存在感を示すのに、核を持ってるか持ってないか、あるいは国が大きい小さいだけじゃないっていうことを、イギリスは示してくれてるところです。

天皇皇后両陛下の訪問を見ながらですね、ぜひ日本のこれからの世界での歩み方というものを、皆さんで考えていっていただければと思います。

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