福島県大熊町の復興拠点避難解除30日で2年 大野駅周辺の再開発本格化

大野駅西側の商業施設に構える店のオープンに向け、準備を進める志賀さん

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県大熊町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除から30日で2年となる。かつて町の中心部だったJR大野駅周辺の再開発が本格化しており、駅西側に整備が進む商業施設と産業交流施設は12月に完成する予定。住民の生活環境の改善により帰還や移住が進むのを町は期待している。

 商業施設にはコンビニ1店、物販店1店、飲食店5店の計7店が入居する。産業交流施設には県内外の企業約30社が入る。住民の交流拠点にもなる。周辺には産業団地が完成し、既に2社の進出が決まった。町は今後も進出企業を募り、働く場の確保につなげる。

 復興拠点内の住民登録者数は2340世帯5827人。ただ、居住者数は186世帯280人(いずれも5月31日現在)となっている。商業施設完成後も買い物環境は十分とは言えず、町民からは現時点で町に存在しないスーパーを求める声が上がっている。町は現在、原地区にスーパーの誘致を目指している。

 町企画調整課は「町で生活する上での利便性を高め、町内に住む人を増やしていきたい」としている。

■「10年先も愛される店を」 大野駅西側の商業施設入居 双葉事務器、志賀社長

 JR大野駅西側の商業施設に入る物販店の双葉事務器は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生前まで大熊町に店を構え、文房具や事務用品を販売してきた。社長の志賀祐広さん(60)は両親が経営してきた会社を守り、古里の活性化に貢献しようと帰還を決意した。「大熊のため5年先、10年先も愛される店をつくる」と誓う。

 「どんな店にしようか」。志賀社長は運営する双葉町のコワーキングスペース「フタバポイント」で準備を進めている。販売する商品、店内のデザイン…。地域を盛り上げるため、アイデアを巡らせている。

 1966(昭和41)年創業。大野駅西側にあった商店街に店を開き、「町の文具店」として親しまれてきた。志賀さんは震災発生の5年前、父から社長の職を継いだ。「会社を終わらせるわけにはいかない」と、原発事故による避難後もいわき市に仮事務所を構え、県内外の避難先に文房具を届けた。「いつかまた、大熊で店を」との思いを抱き続けてきた。

 昔、店には文房具を買い求める子どもたちの声が響いていた。町内では昨年から学校が再開しており、かつての光景が戻るのを期待する。「子どもたちをはじめ、幅広い世代に楽しんでもらえる場にしたい」。古里の明るい未来を見据える。

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