武者修行生かす ハンド男子・笠原(聖光学院高出身)パリ五輪代表入り 東京に続き2大会連続

記者会見でパリ五輪への意気込みを語る笠原

 日本ハンドボール協会は28日、パリ五輪に臨む男子日本代表のメンバー17人を発表し、福島市出身の笠原謙哉(36)=ホルドゥル、聖光学院高出身=が選ばれた。2021(令和3)年の東京五輪に続く2大会連続の代表入りで、チーム最年長となる。五輪後、欧州での武者修行で心身の鍛錬を積んだ。東京都内で開かれた記者会見で「自分のやるべき役割に集中する」と、経験をチームに還元する決意を示した。

 笠原はリザーブ要員として選ばれ選手団としてチームに同行。正規選手14人に体調不良やけがなどが生じた場合、登録変更でベンチ入りし、試合にも出場できる。

 開催国枠で出場した東京五輪は1勝4敗で1次リーグ敗退。笠原は「やり切った」と感じた一方で欧州の強豪との差を思い知った。日本リーグと違い、試合中の激しいコンタクト(接触)が当たり前の環境を求めてアイスランドに渡った。

 「(196センチの)自分が普通」と言うほど大柄の選手がそろうリーグで毎週試合を重ね、体の強さやスピード、味方を生かすプレー、守備技術を磨いた。ベテランの域に達してなお、筋力を示す数値は年々上がっている。帰国後は多くの人に「動きが良くなった」と言われた。他の選手も力を付ける中、「3年前の自分を全てで上回っている」と自信を見せる。

 国際試合の出場数は今回の代表で3番目に多い。若手、ベテランを問わずコート内外での対話を重視し、経験を伝えている。海外生活を経て視野も広がり、心のゆとりも増えた。国際大会の期間中はジムや散歩に誘われることも多い。「話しかけやすい」というキャラクターがチームの潤滑油になっている。

 無観客だった東京五輪と違い、歓声を受けながら戦う。日本から訪れる人も多いとみられ、「ファンや家族に後ろ向きなプレーは見せられない」と表情を引き締める。古里に対しても「目標に向かって頑張る姿を子どもたちに伝えたい」と思いを寄せる。

 アジア1枠を勝ち取り、開催国枠以外では36年ぶりの出場となる。ただ、「相手は全部格上」と厳しい戦いを覚悟している。「自分たちのプレーを見せるのが大事。毎日、チームにエネルギーをもたらしたい」。代表入りを逃した2017(平成29)年世界選手権の開催地フランスで、自身の存在価値を証明する。

 かさはら・けんや 福島市出身。信夫中1年から競技を始め、聖光学院高から東海大に進んだ。2011(平成23)年にトヨタ車体に入り、日本代表は2015年に初選出された。東京五輪では1次リーグの全5試合に先発し、9得点。五輪後にアイスランド2部のホルドゥルに入団し、ポーランド1部のタルヌフを経て昨季、ホルドゥルに復帰した。ポジションはピボット。国際試合105試合出場、65得点。

■父ら活躍に期待

 福島市在住の父弘大(ひろお)さん(72)は、海外挑戦を経て精神的に大きく成長した姿を頼もしく感じている。「これまでの経験を生かし、思い切りプレーできるようチームをもり立ててほしい」と激励した。

 聖光学院高で笠原を指導した元同校ハンドボール部監督の上野覚(さとる)さん(73)=福島市=は、高校時代に主将としてチームをけん引し、力強いプレーで得点を重ねていた光景を思い返す。「日本代表の最年長選手として勝利に貢献する姿を期待したい」とエールを送る。

 県ハンドボール協会の遠藤均会長は「チームの守備の要であり、味方を生かすプレーにたけた選手。持ち味を十分に発揮し、良い結果を残してほしい」と声を弾ませた。

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