券売機 負担増や遅れ懸念 茨城県内企業、迫る新紙幣対応 キャッシュレス導入も

新札の読み取り対応を済ませた券売機。「新札使用できます」という言葉の入ったシールが貼られている=水戸市内

2004年以来20年ぶりの新紙幣の発行が7月3日に迫り、茨城県内の企業や公共交通機関で、券売機などの切り替え準備が進んでいる。中小零細の飲食店や小売店では物価高の中での追加負担となり、経営への影響を懸念する声が漏れる。更新対応が遅れ、期日に間に合わない例も。紙幣刷新を機に、費用が少なくて済むキャッシュレス導入の動きも広がりそうだ。

■追い打ち
水戸市元吉田町のラーメン店「つけ麺みつ圀」では、24日に券売機の新札読み取り機能の更新を終えた。店主の長谷川勉さん(43)は「半年前にメーカーへ依頼して、ようやく更新できた」と振り返る。しかし更新費用は約20万円。原材料高や光熱費上昇に負担増が追い打ちをかける。「出費はつらい。他店も苦労しているので仕方ないが」とため息をつく。

水戸市などで複数のラーメン店を経営する男性は、券売機の入れ替えをこれから注文する。「機械更新が終わるまで旧札と新札を手作業で交換するしかない」と手間の増加を懸念する。

■1年待ち
自販機では更新の遅れが見られる。水戸市見川の食料品店「高橋ストアー」では、店の自販機はメーカー側の費用負担だが、連絡が来ていない。経営者の高橋力さん(87)は「更新時期はまだ決まっていない」と諦め顔だ。

遅れの背景には、自販機や券売機のメーカーに注文が殺到していることがある。製造販売を手がけるオクト(守谷市)には、駆け込み対応を求める事業者からの電話が相次ぐ。神保周平社長(66)は、新紙幣に対応する機器について「半導体不足の影響で今は物がない状態。新品の自販機、券売機だと約1年待ち」と明かす。

■経営効率化
キャッシュレス決済を増やし、経営効率化につなげる動きも出ている。水戸市笠原町の温浴施設「スーパー銭湯やまの湯」では、従来の券売機を1台減の3台にし、新たにキャッシュレス専用の券売機を2台導入。国補助金を使い出費を軽くした。山野和哉社長(51)は「長い目で見てキャッシュレスの機械も必要になる」と見据える。

人手不足が深刻なバス会社ではキャッシュレス対応機を拡充し利用を促す。ただ運賃箱の更新は必須で、1台100万円超とされる。あるバス会社では高速バスでの更新が秋口にずれ込み、運転手が手作業で旧札と交換するという。

常陽産業研究所の尾家啓之チーフエコノミストは「対応の遅れている機械には旧札を使ってもらい、徐々に切り替わっていくのでは」と指摘。「今後現金の需要はこれまでのようには伸びないだろう」とキャッシュレスの普及を予測した。

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