萩生田・自民都連会長が逆風下に地元八王子に現れたワケ…厳戒態勢の都議補選初日に直撃

到着の途端に雨脚が強まり(C)日刊ゲンダイ

「ゲンダイさん、いつも手厳しいですね」──。どしゃ降りの中、日刊ゲンダイの直撃に身長180センチの巨漢は開口一番、苦笑いを浮かべた。28日はもうひとつの首都決戦、都内9選挙区の都議補選(7月7日投開票)の告示日。裏金2728万円で「党の役職停止」処分を受けながら、自民党都連会長を続ける萩生田光一氏が地元・八王子市に現れた。

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自民は8選挙区に候補を擁立。八王子市はそのひとつで、自民新人の馬場貴大氏と諸派元職の滝田泰彦氏との一騎打ち。欠員前に持っていた議席死守が自民の至上命令だが、裏金事件がたたり、現状は滝田候補の一歩リードだ。

逆風の「元凶」はおひざ元候補の出陣式に登場するのか。会場の横山町公園で待ち構えると、午前11時の開始時刻10分ほど前に萩生田氏がやってきた。やはり「天」は見ているのか。到着の途端、雨脚が一段と強まっていく。大きなビニール傘片手に「参ったな」と空を仰ぐ萩生田氏。関係者とのあいさつの隙を見て記者は近づき、話しかけた。

──きょうはお会いできないかと思いました。

「なんで?」

──「選挙戦の前面に立たない」との報道もあったので。

「あ~。いや、いや、普通にやりますよ」

──応援はきょうの1度きり?

「それはない。これからも八王子は全力で支援します。街頭も出ます」

──都連会長として他の選挙区の応援は?

「要請があれば行きますよ」

──都知事選の応援は?

「それはチョット……」

自民候補の応援はまたステルス

記者が「都知事選では『萩生田百合子』と呼ばれていますね」と続けると、怪訝な顔で何も答えない。後に萩生田事務所の関係者は「SNSを見ないから、分からないのかも」と説明した。ある意味、幸せな男だ。

そこに30代とおぼしき女性支援者が萩生田氏に声をかけ、ツーショット写真をせがむ。撮影を終え、記者が「まだ、人気ありますね」と声をかけると、萩生田氏は「いやあ、そんな」とまんざらでもない様子で謙遜してみせた。

出陣式が開始。いつの間にか、選挙カーの前に規制線が張られていた。萩生田氏に近づこうとする報道陣を女性スタッフが必死で止める。厳戒態勢だ。その間、記者は萩生田氏の横に立ったまま。何食わぬ顔でいると、スタッフが近づき「他の記者から『あの記者だけ、なぜ近くにいるのか』とクレームが入りまして」。仕方なく支援者の集まる場所よりも、さらに後ろに離れた取材スペースに引き下がった。

「逆風の選挙になってしまいました。そもそも逆風の原因を私自身がつくってしまった。申し訳ない思いがあります」

応援演説で萩生田氏はしおらしく謝罪し、「ご批判があるとすれば私の国政選挙で自らが受けなくてはいけない。今回は八王子の声を東京都政にしっかり届ける代表を選んで欲しい」と強調。最後は「批判を恐れず先頭に立って頑張らせていただきます!」と訴えた。

「勝つぞ」コール三唱で終わり、いざ報道陣は萩生田氏を囲もうとしたが、集まった300人近い支援者の“傘の山”に阻まれて姿が見えない。気づけばターゲットはすでに立ち去っていた。

「萩生田さんも表に出れば都議補選にマイナスだと理解しているはずですが、自分の選挙を考えれば出ざるを得ない。いつ解散総選挙があってもおかしくない中、失地回復を狙っているのでしょう」(自民党関係者)

都議補選の間は候補とともに街頭でのスポット演説や箱モノ集会に臨むが、「本人が目立つと候補に迷惑。事前告知は考えていない」とは萩生田事務所の関係者だ。また、ステルス支援。堂々と「先頭に立つ」気がなければ復権は遠い。

(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)

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