俳優・小関裕太がフォトグラファーとして初の写真展を開催 自身のカメラライフを交えて語る「写真へのこだわり」

俳優・小関裕太が、フォトグラファーとして初となる写真展を東京・恵比寿「オーツーギャラリー」にて開催中。本写真展は、自身の29歳の誕生日に発売した作品集『LIKES(ライクス)』の出版記念で開催され、雑誌「GENIC」で4年間続けている連載での写真や『LIKES』のためにフォトグラファー・女鹿成二氏が撮り下ろした“フォトグラファー・小関裕太”の写真を展示。さらに、『LIKES』では未掲載の写真展で初公開される作品も。 また、展示会場では、本作品集の制作過程に密着したメイキング映像の上映や、展示作品の販売などを予定している。

開催に併せて報道陣にお披露目された取材会で、小関は初の写真展開催を受けての心境を「元々、今回の写真展のベースは2020年に始まった『GENIC』の連載でしたが、4年前にはこのように写真展になると思っていなかったので、まず写真展ができることが嬉しいです。実際にカタチになってみると想像以上のダイナミックさで興奮しています」とコメント。

作品集『LIKES』のこだわりについては「とにかく自分の“好き”という思いを原動力に、その思いが湧いた瞬間にカメラを構えるという衝動だけでずっと撮ってきました」「でも、その中でどんどん変化があって、4年間やっていると物の見方、写真の撮り方も変わってくるのかなというのも、作品集を作っている中で実感しました」と写真を通じた自身の変化について語った。

また、作品集の中での対談を振り返りつつ「対談の内容は今までの写真との向き合い方、そしてこれから、どう写真と向き合っていきたいのか、写真が自分にとってどのような存在なのかを見つめる大きなタイミングになったと思います。そういう意味で、すごく大事な作品集になりました」「そしてその作品集を受けての展示会となったので、僕としては 写真の並び順だったり、ジャンル毎に人のブース、物と景色のブースと分けつつ、連載を体験できるようにとしました」と見所を解説。

連載と同じく、作品集の編集作業自体も担ったとのことで「ページ全体でひとつの写真みたいに捉えてもらえるように、あえて写真ではない形で構成しているので、雑誌のように立体的に楽しんでほしいです」とこだわりを述べた。

今後の取り組みに関しては「最初は衝動で撮っていた写真が、こんな写真を撮りたい、こんな画角で撮りたい、こんな色を出してみたい、照明を勉強してみたいというのが募っていった4年間。改めてこの期間で、作家性が出てきたのですが、これからの写真の旅でより深く見つけていけたらと思っております」と挨拶した。

また続いての報道陣との質疑応答では、カメラとの馴れ初めを尋ねられ「18歳の時にデジタルカメラを貯金をはたいて買いました。きっかけは同年代の友人たちがカメラを持っていて興味があったのですが、フイルムカメラだったので(現像するまで)どういう色になるのか、撮れているのかも分からないのが怖かったので、まずはデジタルに挑戦してみようと思い、最初に買ったのが今でも使っているデジタルカメラなんです」。

「その後、フラッと立ち寄ったカメラ屋さんで手にしたミノルタの(フイルム)カメラで、80年代のカメラでフイルム写真をやってみようと。 そこから少しずつ、このカメラはこういう色合いが出るんだ、ライカ高いな、でもいい色だなとか(笑)。そういうのを知りながら、今も探っている最中ですね」とカメラ好きぶりを披露。ちなみに現在、メインで使っているのは、デジタルカメラ1台とフイルムカメラ2台、そしてあとはチェキなどを使っているそうだ。

展示会に掲げられた写真の中でのお気に入りは、宣伝ポスターでも使われている縦写真で「この写真は福岡で撮った写真になります。1年前に舞台『キングダム』をやっていたのですが、体力的にも本当に大変でゴールにたどり着くのが必死という日々の中で、ようやく一息ついた福岡で、ふと深呼吸をしたときの景色になります。夜に差し掛かった町でいろんな人の想いが交差する瞬間がキラキラしている景色に描かれております。そういう思いもこの写真を通して感じてもらえたらなと思っています」と紹介。

今後、俳優だけでなく写真家として活動することに関しては「フォトグラファーとして自分でも写真へのこだわりとが前よりも増えているので、役者も真剣にやりつつ、フォトグラファーも真剣にやって、撮る仕事と撮られる仕事が相乗効果になったらいいなと思って本気でとりくみます」と想いを語った。

■デジタルとフィルムの使い分けも。フォトグラファー・小関裕太のこだわり。

なお、カメラとそのカルチャーを追うリアルサウンドテック編集部としては、人気俳優というだけでなく、写真家・小関裕太の魅力をもっと知りたいと思い、インタビューを実施。より深いカメラへのこだわりを聞いた。

ーー個人的には作品展で掲げられていた、デジタルカメラとフィルムカメラを同時に持つ小関さんの写真が印象的でした。デジタルとフィルムの使い分けなどは意識されているのでしょうか?

小関:実はしてます。デジタルは片目で覗くファインダーの中で出ている色味や明暗、画角・露出度・ボケ感などがそのままデータとして形になるので、割と意思がある写真が撮れるなと。自分が思ってる画角よりちょっと下・広いなどはフィルムに比べてないので、撮りたい画をちゃんと残したいという時はデジタルですね。一方で、ちょっと遊びがあったり、自分の想定外なことが出てくる、それを楽しめるのがフイルムという使い分けがあります。

ーーオススメ写真の中として福岡の風景写真を挙げてましたが、あちらはフィルムですよね。

小関:あの写真は想像以上にいい写真になったんです(笑)。当時、福岡は夜だったので(フィルムだと)どこまで映るか分からなかった。試しにシャッターを押してみたって感じでした。まさかあそこまで明るく写るというか、色だけにならず、ちゃんと輪郭がある写真になると思ってなかったので、現像できた時に興奮しました。

ーーデジタルと違ってフィルムだと、現像に入れて上がってくるまでの待ち時間もありますが、そういうのも写真の醍醐味ですよね。

小関:今年に入ってから、それはひとつの楽しみになりましたね。写真をやってる方との会話の中でも感じたのですが、どうしてもフィルムだとタイムラグがある。でも写真屋さんに出して現像で出てくるまでの所要時間っていうのが、客観的に見られるようになる時間で。自分が撮った作品なんだけど、自分の主観じゃないところで見られるための時間なんだっておっしゃってた方がいて。面白いなと。自分が思いを込めた写真と時間を置いて距離を置いて見るようにする。そういう楽しみ方ができるっていうのが、新しい価値観でしたね。

ーー実際に4年間やってきて色々と吸収されているとのことですが。今は時間を置いて作品にするということも意識されているのですか?

小関:でも、今は僕はテザー撮影ばっかりに興味がありますね(笑) ケーブルどれにしようかなとか。写真やってる人によってこだわりが違うんですが、このケーブルをちょっと改造するといいんだよとか聞いたりして。

ーーもう、カメラの沼にはまりつつありますね。

小関:だいぶ深い沼です。もう果てしないです(笑)。

ーーあえて好きなメーカーを挙げるとしたらどこですか? ガジェット好きとしたら、ぜひお伺いしたいです。

小関:今メインで使っているのはデジタルカメラは富士フイルム、フィルムカメラはミノルタ、そして2眼のチェキなど。後は父が昔使ってたキヤノンのカメラがあったり。

その中であえていうと富士フイルムの独特の色合いが好きです。ちょっと青というか、その風合いがビビッと効いて、見てる景色よりもちょっと青く暗くなる印象があるんです。黒が強くなるというか。なのでその特性は好きですね。

またこれは作品集にも書いているのですが、祖父が近所の人たちのフイルムの現像とかをやっていたらしく、それを知って初めて買った富士のデジカメを祖父のところに持っていったら、試写してこのカメラすごいなって。このボケ感がすごいんだよ。このボケ感はレンズもいいし、色合いもいいし、これがこの富士フイルムのカメラの特徴なんだよって熱弁してくれて。その時、僕より詳しくて「祖父はこんな写真が好きだったんだ」と思ったと同時に「またカメラの特徴を知りたい」と好きになった瞬間でした。

そこで撮った写真が、作品展にも展示している湯呑みの写真なんです。あれは僕にとってはお見せするのは恥ずかしい。本当に無垢な衝動だけで撮った写真なんですけど、今になってすごく大切な写真になってて、そういう思い入れも込めて、今回あえて展示してみようと思いました。

ーーそれは見所のひとつですね。初めてのカメラの出会いや祖父とのエピソードがその1枚に詰まっている。

小関:ちなみに、その後にライカにも出会ったんですが、ライカはライカらしい色があったりするけど、青とも赤とも言えるちょっとしっとりしてて、油絵っぽい質感があって。ライカへの憧れはどうしてもあるんですけど、まだ買ったことなくて、友達たちはみんなライカのデジタル、ライカのフイルムと手にしたりしてるんですけど、なんか負けたくないって思うことがあって(笑) 今のカメラで独特の質感を編集も込みで出してみたいなとか、そういうのも考えながらいつも撮ってます。

ーーちなみに編集というキーワードもでましたが、今回の作品集は雑誌編集に近いような試みとお伺いしました。その辺のこだわりもお伺いできればと。

小関:もともと、連載では僕が全部編集してるんです。今回の作品集はその編集過程をお見せするスタイルブックみたいな感じですね。ものづくりをしたい人に刺さるような本にしたいなと思って作ってました。

ーーもはや、俳優、写真家だけでなく編集者でもありますね。

小関:ありがとうございます。その位、連載では毎回しっかり編集してます。編集作業を念頭におきながらいつも写真を撮ってますし。こういうページが作りたいから縦写真が欲しいとか。

ーーなるほど。今日、写真展を見て思ったのは縦写真と横写真で撮り分けを意識されてるなと感じたのですが延長線上には紙面の編集作業もあったのですね。

小関:縦を使えると、例えば1ページでドン!ってできて気持ちいいじゃないですか(笑)。横だと足りなくなったりするんですよ。空間がありすぎたりして。逆に文章のページとか作りたい時は狙って横で撮ったりとか。

ーー写真展ではそんな編集作業風景も再現されていましたが、実際にご自身って赤ペンで色校に指示いれたりしてるのですか?

小関:はい。編集ワードも少しずつ覚えてきて、最近はノド(※本の中心。写真が切れたりするので編集者には注意箇所)とかも、今回の本を作るにあたってノドを気を付ける、ノドを外したいんで、ちょっと写真を左に移動したりなど細かく指示いれたり。

ーーまさに編集者ですね。俳優・写真家、そして編集者としても、小関さんはとにかく研究熱心。この先、どんなこだわりを持って写真に取り組まれていかれますか?

小関:人間性やその人の本当の性格みたいなところを正面で向き合って話すと向き合えないけど、カメラを通すとお互い素が出せるような瞬間ってあるじゃないですか。カメラを通すと正直になるというか。そこで生まれる対話みたいな瞬間はカメラにしかないなと思うのです。それを今までは友人とか近しい人しか撮ってないので、それを広げていけたらと。また編集を見据えた作品作りや遊び心ある写真。それらを大切にしていきたいなと思ってます。

(文=小川太市)

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