「改めて甘いと...」大阪体育大FW古山兼悟が母校の“先生”として後輩から受けた刺激。来季のC大阪加入が内定

勝てば総理大臣杯への出場が決まる関西学生サッカー選手権大会の5、6位決定戦が6月26日に行なわれた。3年ぶりの出場を目ざした大阪体育大は、阪南大から奪った2度のリードを生かせず2-3で敗戦。目標にしていた全国大会への切符を今年も掴めなかった。

負けたショックは大きく、試合後は動けなくなる選手が多くいたなか、誰よりも落ち込んでいたのは来季からのセレッソ大阪入りが内定しているFW古山兼悟(4年)だった。

立正大淞南高に在籍した高校3年生の夏は、新型コロナウイルスの感染拡大により、インターハイが中止となり、冬の選手権は予選決勝で涙を飲んだ。

大学に進んでからも全国大会との縁は遠い。1年目の夏に総理大臣杯の1回戦に出場したが、出場時間は試合終了間際の4分間のみ。以降は夏冬ともにチームとして全国大会の舞台まで進めていない。

「全国大会にかける想いはほかの人の数倍あると思う」

そう振り返る古山は阪南大戦に出場し、前線で身体を張って、チーム最多のシュートを打つと後半5分にはアシストを記録。残り10分をリードした状態で迎えたが、試合終盤に失点して逆転負け。「ようやく全国に行けるとイメージしてしまった自分がいた。また弱さが出てしまった」と唇を噛んだ。

全国大会出場にかける想いは以前にも増して強くなっていた。関西選手権の直前には教育実習生として2週間、母校である立正大淞南高に凱旋。体育の授業を受け持ちながら、後輩たちとともに汗を流した。

その期間中には立正大淞南高がインターハイ予選で優勝し、歓喜に沸く瞬間も目の当たりにし、「後輩たちが全国大会に行く瞬間を見ちゃったので、俺も行きたいなと思っていた」という。

【選手権PHOTO】堀北・ガッキー・広瀬姉妹! 初代から最新19代目の藤﨑ゆみあまで「歴代応援マネージャー」を一挙公開!
懸命にサッカーと向き合う後輩たちの姿は“古山先生”にとって大きな刺激になった。

「正直、淞南生のパワーは凄い。改めて“甘い”と思う自分がいた。今までも頑張ってはいたけど正直、これで良い、俺はできていると思っていたけど、淞南の後輩を見ていたら1日中頑張っている。俺も1日中頑張らなければいけないと思って、帰ってきてから自分を見つめなおしました」

これまでもピッチで躍動するために身体のケアや食事、筋トレは意識してきたが、自チームに戻ってからはより気遣うようになったと明かす。

今シーズン前にはC大阪のキャンプに帯同。チーム事情もあって、左SBなど慣れないポジションでのプレーが続き、FWとして試合に出たのは20分ほどだったが、収穫は多かった。

「少ない出場時間で点は取れなかったけど、良い動きはできていた。それに“ここが俺の武器だ”と思える部分が見つかった。ゴールに向かう部分は負けていないというか、負けられない」

昨年からは同じ大阪体育大のOBであるFW林大地(ニュルンベルク/ドイツ)を参考にゴール前でより積極的に仕掛けて、決め切ろうと練習から意識してきた。一人でやり切るだけでなく、もちろん周りを使わなければいけない場面もあり、色んな立場の人からアドバイスも受けるが、ストライカーとしての信念は揺らがない。

「流されやすいタイプではあるけど、自分の芯というか、今挑戦しているところはぶらしたくない。“古山兼悟はこれだぞ”というのは忘れないように時々メモを見て、頭の中に常に入れています」

残された学生生活はわずか。全国大会と呼べる舞台は12月の総理大臣杯のみ。古山は自らが得点を量産し、チームを勝たせることで関西王者として出場するつもりだ。

取材・文●森田将義

© 日本スポーツ企画出版社