夫亡きあと、ようやく自由に…「夫の名字とサヨナラして旧姓に戻りたいが、どうすればいい?」…具体的な手続きの方法【税理士が解説】

(画像はイメージです/PIXTA)

夫が亡くなったあと、名字を旧姓に戻したいという女性は意外と多いもの。今回は、亡き夫の名字から、自分の旧姓に戻す手続きについて見ていきましょう。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

旧姓に戻したいなら「復氏届」を提出

先日、30年以上連れ添った夫が亡くなりました。夫との関係は円満ではなく、これを機に旧姓に戻し、姉妹のいる郷里に帰ろうと考えています。旧姓に戻すには、どのような手続きが必要なのでしょうか?

60代・パート(さいたま市)

相続のお手伝いをしていると、ご主人が亡くなったあと「旧姓に戻したい」とおっしゃる女性にかなり遭遇します。

旧姓に戻すには、「復氏届」を提出します。復氏届とは、その名の通り、結婚によって姓を変えた人が、配偶者が亡くなったあとに旧姓に戻す届け出です。

なお、この復氏届を提出して旧姓に戻したことで遺産相続、遺族年金などで不利になることはありません。

一方で、姓が変わることによって銀行の口座や健康保険証など、様々なものの名義変更が必要となります。手続きには手間もかかりますので、慎重に判断するようにしましょう。

復氏届はどこに提出する? どうやって書く?

復氏届の提出先は、本籍地または居住地の役場です。復氏届の用紙は、市区町村役場の窓口でもらえるほか、自治体のホームページからダウンロードすることもできます。

[図表]復氏届 出所:札幌市役所ホームページ
※用紙は提出先の市区町村役場の窓口で入手できます

用紙が用意できたら、必要事項を記入してください。

記入の際は、まず「復氏する人の氏名」の欄に、現在の名前を記載します。続けて、住所や世帯主の氏名、本籍を記入する箇所もあります。「復する氏」の項目には旧姓を記入します。旧姓が「山田」なら「山田」と記入してください。あわせて、自分の両親の氏名と続き柄の記入も必要です。

また、復氏届では「もとの戸籍にもどる」「新しい戸籍をつくる」のいずれかを選択する必要がありますので、どちらかにチェックを入れてください。

最後に本人の署名と、押印で記入は完了です。これで配偶者の姓から旧姓に戻す手続きができます。

これらの記入例も、自治体のホームページで確認することができます。

復氏届は配偶者の死後何日までに提出しなければならない…といったことはなく、期限は定められていないため、配偶者が死亡したあとなら、いつでも手続きをおこなうことができます。

復氏届の提出には、亡くなった方の親族の同意や、家庭裁判所の許可もいらないほか、婚姻届のように証人等も必要ありません。自分が旧姓に戻りたいと思ったら、いつでも復氏届を提出してよいことになっています。

しかし、復氏届は、届出をおこなった本人のみに適用される届出です。そのため、もし亡くなった配偶者とのあいだに未婚の子どもがいたとしても、子どもは亡くなった配偶者の戸籍に残ることになり、姓は変わりません。

未成年の子どもの姓の変更は、家庭裁判所の許可が必要

もし、子どもの姓を自分の旧姓と同じものに変えたい、子どもを自分の戸籍に移したい場合は、家庭裁判所での手続きが必要です。

家庭裁判所で子どもの姓を変更する許可を取り、亡くなった配偶者の戸籍から、自身の戸籍に移す手続きをすることになります。

家庭裁判所で変更許可をもらう具体的な手続きとしては、「子の氏変更許可申立書」を提出する必要があります。この申立書は裁判所のホームページからダウンロードが可能です。

費用としては、子ども1人につき、800円の印紙代がかかります。それ以外に、戸籍謄本などの書類も必要になります。

申立書は、子ども本人が15歳未満で、自ら申立できない場合には、お母様や弁護士が法定代理人として申立をおこなうことができます。

申立書の提出から1~2週間ほどで許可がおり、氏の変更許可審判書が交付されます。

その後は、入籍する子、入籍先の親の本籍地、または住所地の役場へ行き、入籍届の提出をする必要があります。入籍届の提出の際は、家庭裁判所から交付された審判書と、子どもが15歳以上であれば子ども本人の身分証、子どもが15歳未満であれば届出をする親の身分証が必要となります。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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