定年後は「世界一周旅行」に行きたいです! 退職金「2000万円」あれば足りますか? 旅行後は「年金だけ」でも生活していけるでしょうか?

実際に世界一周はどのくらいの金額がかかるの?

世界一周旅行にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。旅行会社HISのプランによると、世界一周旅行は35万円ほどから可能となっています。ただしこの金額には空港使用料や燃油サーチャージ料、宿泊代金、食費などは含まれていません。そのため、世界一周旅行は1人当たり100万円~200万円かかると考えておいたほうが良いでしょう。

そして今回の事例では、退職金2000万円の全額を使って世界一周旅行をしたいということでしたが、2000万円あれば世界一周することはじゅうぶん可能です。とは言え、世界一周に限らず、退職後は好きなことをしようと退職金を使い切ってしまうと、その後の生活に困ってしまいます。

旅行でかけがえのない思い出をつくることもとても素敵なことですが、退職金を全額旅行に費やすのは考えものです。

65歳以降の夫婦世帯および単身世帯の平均支出はどのくらい?

世界一周旅行は退職金2000万円でじゅうぶんに行けることが分かりました。とは言え、旅行はぜいたくしようと思えばいくらでもお金を出してぜいたくができてしまいます。もし仮に退職金2000万円を全て使ってしまった場合、そのあと年金だけで生活をしていけるのか不安になるかもしれません。

年金だけで暮らせるのかを計算していくにあたり、まず65歳以降の平均支出がどのくらいなのかを見ていきましょう。

総務省の調査によると、65歳以上の夫婦のみの世帯消費支出は、社会保険料などの非消費支出を合わせると28万2497円となっています。また単身世帯の場合は、月の平均支出額は15万7673円となっています。支出項目の平均費用の一部を抜粋したものが図表1です。

図表1

総務省 家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要を基に筆者作成

支出項目の中では夫婦2人世帯でも単身世帯でも、「食料」「教養娯楽費」「交通・通信費」「光熱・水道」の項目で支出金額が大きくなっています。

年金だけで生活していけるの?

65歳以上の夫婦のみの世帯消費支出が28万2497円、単身世帯の場合は15万7673円であることをふまえて、年金収入だけで生活していけるのかを計算してみましょう。今回は、会社員として40年間就業したと想定します。

夫婦2人の場合

日本年金機構によると、令和6年度の夫婦2人の標準的な厚生年金支給額(老齢基礎年金を含む)は23万483円です。この年金支給額と夫婦2人の消費支出額28万2497円を比較すると、5万2014円不足していることが分かります。

支出を減らすか、定年後にアルバイトなど短時間でも勤務することで収入を補てんする必要があり、年金だけで生活するのは難しいと言えるでしょう。

特に、住まいが賃貸の場合は、平均消費支出額よりも支出が増えてしまうことが考えられます。退職金を残しておくことで、生活費の不足分を補てんできるため、余裕を持った暮らしができるでしょう。

単身世帯の場合

単身世帯の年金支給額は、令和4年の平均年金月額14万4982円として考えてみましょう。単身世帯の平均支出が15万7673円だとすると、1万2691円不足しています。

夫婦2人のときと同様に、支出を減らすか、定年後に働いて赤字分を補てんする必要があり、年金だけで生活するのは難しい可能性が高いです。単身世帯の場合でも、退職金を残しておいたほうが安心して暮らしていけると言えます。

世界一周旅行は1人当たり約100万~200万円! 年金だけで生活するのは難しいため、ある程度退職金を残して旅行を楽しもう!

世界一周旅行は滞在日数や滞在する地域にもよりますが、1人当たり半年で約100万円、1年間で約200万円かかることを解説しました。年金だけで生活していくのは難しいため、退職金を全部使うのではなく、ある程度老後の資金として残したうえで、旅行を楽しむのがいいでしょう。

出典

総務省 家計調査報告[家計収支編] 2023年(令和5年)平均結果の概要
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報 令和4年度

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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