中学1年から一人で暮らした…すがちゃん最高No.1「悩んでいるきみへ。ずっときついってことはないんだよ」

(撮影:高野広美)

お笑いトリオ「ぱーてぃーちゃん」すがちゃん最高No.1さんが、中学生時代に一人暮らしを始めることになった体験を記したエッセイ『中1、一人暮らし、意外とバレない』(ワニブックス)を刊行。Amazon「タレント本総合」で1位を獲得するなど、話題となっている。

今回はすがちゃん最高No.1さんが、中学生1年生で一人暮らしを経験した話を、インタビューマン山下が聞いた。

■借金取りが作ってくれた雑草の卵とじ

――中学生1年生で一人暮らしを始めることになった当時、どういった心境だったんですか?

すがちゃん最高No.1(以下・すが):中学生の一人暮らしが漫画のキャラみたいで「かっけぇな」って思ってました。

――生活費など不安ではなかったですか?

すが:東京に住んでいる伯母さんが月に2万から3万円を仕送りしてくれたり、おばあちゃんの年金が入ったら、それ使ってなんとかしていました。でも親父が借金してて、家に借金取りがちょこちょこきてたのが……。

――中学生ですから借金取りにこられたら怖かったのでは?

すが: はい。ドラマに出てくるような借金取りのタイプだったので。夜の7時半ぐらいに毎日電話がかかってきて。「お父さん、いる?」って。それで「いないです」ってずっと言ってたら、ある日の夕飯時ぐらいにドンドンドンドン!って玄関の扉を叩かれて。「お父さん、いる?」「いません」「他に家族は?」「いません」「じゃあ中に入って見ていい?」って言われて。本当にいないから「どうぞ」って中に入れたんですよ。

――それは怖いですね

すが:その時は、めっちゃお金がなくて。ごはんも買えなくて、雑草をとにかく食べる時期で。

――どんな時期ですか(笑)。雑草をとにかく食べる時期って草食動物でしかないでしょ。

すが:近くに広い公園があって、そこにニラみたいな草が生えてて。「これニラなんじゃないか?」と思って。そしたら公園にいたおじさんが「それ食える草だぞ」って教えてくれて。その草を家に持って帰って炒めたり、お湯に入れてみたりしたんですけど不味くて。たぶん食えない雑草だったんですよ。

――おじさんにだまされましたね。

すが:でもこれしかないから、食卓に並べてて。雑草なんで泥と草の苦い臭いでリビングが臭いんですよ。それを借金取りが見て「なんだこれ?」「ぼくが今日食べるごはんです」って。そしたら借金取りが僕のことを不憫に思って、卵を買ってきて雑草を卵でとじてくれました(笑)。

――優しい借金取りですね(笑)。

すが:「おまえ、頑張れよ。どうしょうもない親父だな」って借金取りに言われて。僕も「いや、まいっちゃいますね」みたいな。

■自宅に侵入した泥棒の恐ろしすぎる正体

――一人でいる寂しさはなかったですか?

すが:寂しいときもありましたね。そんなときは壁の薄い木造の一軒家の家に行って、家族団らんの声を聞いていました。

――それは寂しいですね(笑)。家族のあたたかさを少しでも体感しようと。

すが:これはちょっとやりに行っているところはありますけど。茶碗にごはんを盛って、団らんの声を聞きながらご飯を食べてみたりとか。でも急に冷静になって「なにしてんのコレ!」ってなって、やめましたけど。

――一人でいて怖い思いをしたことはなかったですか?

すが:泥棒に入られたことがありました。

――え!それは怖いですね。

すが:僕の家の隣に老夫婦が住んでて「ハンバーグを多めに作ったからあげる」とか。向かいのおじさんが「山菜採れたからやるよ」とかあって。

――そういうご近所付き合いがあれば、少しは安心ですね。

すが:田舎なんで別にカギとか閉めないじゃないですか。夏場で寝付けなくて起きてたら夜中の2時ぐらいに家の庭のジャリの音が聞こえて、茶の間の網戸をギィーってゆっくり開ける音がして。「絶対泥棒だ」と思って。それで僕は筋トレ用の棒と携帯電話を持って、携帯のライトを手でおさえて足元を照らしながら2階の部屋から降りていったんです。そしたら懐中電灯でリビングが照らされてて。「うわ、確定で泥棒だ」って。

――これはだいぶ危険ですね。

すが:そのタイミングで友達から電話がかかってきて。そしたら泥棒もびっくりしてダーンってなにか物を落とす金属音がして、バァーって逃げて行ったんですよ。

――結果的に電話が鳴ってよかったですね。

すが:それでリビングの電気を点けたら鎌が落ちてて。

――え!鎌!?怖すぎるでしょ!

すが:「殺されるとこだった」と思って。それで警察に連絡して1週間ぐらいで捕まったんですけど、向いの僕に山菜をくれてたおじさんが犯人だったんですよ。

――え! めちゃくちゃ怖いじゃないですか!そんなことがあったらさすがにお父さんに家に帰ってきて欲しくなったんじゃないですか?

すが:一応、親父にも泥棒が入ったことを言ったんですけど「なにしてんだ、おまえがやっつけろよ」って言われました。

――いやいや、相手は鎌を持ってたのに危ないでしょ(笑)。

■「きついときは、自分を漫画の主人公だと思って」

――いろんな体験をしましたが結局一人暮らしはどうなって終了したんですか?

すが:高校に上がって徐々に親父が家にいる日も多くなってきて、おばあちゃんもちょこちょこ戻ってきたりで、フワッと一人暮らしではなくなりましたね。

――最後に家庭環境が複雑で悩んでいる人に声をかけるとしたら、どんなことを言ってあげたいですか?

すが:きついこととか「今やだな」と思うこと…「そこに酔いしれてみてよ」って言いたいです。

ずっときついってことはないんですよ。楽しい5年後があるかもしれない。例えば今、ちょっと親との関係性がよくないとか家庭内や自分のことで悩んでいることがあるとします。

でもそのときは「自分が漫画の主人公で、きつい修行編だと思って逆に悲劇の主人公を俯瞰で見て楽しんじゃいな」って。その後に環境が変わったら絶対に良くなるから。きついことも後にエピソードになるし。人の不幸ってみんな笑ってくれるんで(笑)。

(取材・文:インタビューマン山下)

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