維新「説明会」で“口撃” 執行部批判に馬場代表は「あなたは選挙を知らない」と応戦 幹部が語る“自維交渉”の裏側

維新が揺れている。政治改革をめぐる国会での「迷走」に支持者から困惑の声が相次ぐ。矢面に立つ地方議員は不満を募らせ、ついに離党者も出た。水面下で自民党との交渉に当たってきた幹部は今、何を思うのか。

非公開の「説明会」音声データには…

6月26日、衆院議員会館の一室に、日本維新の会の幹部らが集まった。オンラインでつないだ先には、地方議員、地元に帰った国会議員、立候補予定者が計500人近く。今国会での対応をめぐる「説明会」が行われた。

通常国会で、馬場代表は岸田首相と合意文書を交わし、政治資金規正法改正の自民案を修正させた後、衆院で賛成した。しかし合意文にあった調査研究広報滞在費、いわゆる「旧文通費」の改革が会期末までに間に合わなくなると、参院では一転して採決で反対に回り、「ウソつき内閣」と呼んで岸田首相への問責決議案も提出した。チグハグに見える経過に、地方議員からは説明を求める声が続出していた。

説明会の冒頭、あいさつに立った馬場代表は、「後ろからバンバンバンバン仲間を撃つことをすれば、すぐにこの日本維新の会という政党はつぶれていく」と語り地方議員などの不満の声をけん制した。その後、説明会は非公開に。FNNが入手した音声データには、生々しいやり取りが残っていた。

冒頭の馬場代表の発言に対し、大阪府内の市議からは、「後ろから撃つなというふうに言われると、私たちは何も言えなくなるので、それはやめていただきたい」と、苦言が飛び出した。

さらに、政策活動費から支出されてきた選挙区のデータ分析費用について、大阪府議が「結果として議席が増えたことがあるのか」と質問。藤田幹事長が「(特定地域だけ)街宣車の音声で地域課題のテープを回すとか、活動の精度を上げる手法だ」と説明すると、府議は「そういったデータ戦略をしていたのなら3連敗はなかったと思う」と、藤田幹事長の地元での市長選で、維新候補が3連敗した話を蒸し返して、党執行部の政策活動費の使用に疑問をぶつけた。

普段から「データ好き」を自称する藤田幹事長への“個人攻撃”に、馬場代表がたまらず参戦。「調査やって負けるのがおかしいということであれば、あなたはあまり、選挙を知らない方やと思う。そういう考えは少し改めた方がいい」と、発言を制する一幕もあった。

政策活動費「10年後公開」に異論続出

説明会で意見が集中したのは、維新が自民の法案に盛り込ませた、政策活動費の領収書の「10年後公開」だ。近畿地方の市議からは、「10年って何なん?と、みんな突っ込まれる」と悲痛な声が上がった。関東地方の立候補予定者からも「自民党のための10年だ。維新もそこに近づいて、10年間公開しないのか」と疑問が投げかけられた。

「10年」の根拠を問われた音喜多政調会長は、「外交文書に合わせると理屈が立つので、30年と提案したが、長すぎるという意見が大勢を占めた。日銀の政策決定会合(の議事録)は10年。海外(トップの任期)は、だいたい2期8年。10年経てば政治勢力も一周するだろうということで、そこそこ合理的な説明ができる」と説明した。

大阪府知事の吉村共同代表は、「政策活動費について、完全廃止にすべきじゃないかと、僕は思っている」と提案。藤田幹事長は「前向きに検討する」と繰り返して廃止提案を“受け止める”方向性は打ち出したが、廃止に賛同する意見はさらに続いた。

最後に声を上げたのは、自民党との交渉にあたってきた遠藤国対委員長だった。「1点、決めていいですか。10年後の領収書については、全くその通りだと思う。10年というのは、もう自民党との話は反故になっているから、ゼロベースで考えたらいい。大前提が崩れているから、この方向で打ち出してやっていくべきだ」。1時間後に行われる藤田幹事長の記者会見で、「維新は政策活動費を廃止する」と発表することも決まった。

自民との交渉の「裏側」

記者会見から2時間後、遠藤国対委員長に単独インタビューを行った。説明会について、「耳の痛いことも言って当然だし、言われることを嫌がっていてはあかん。うまく文通費改革ができていれば、こんなことになっていなかった。大きな責任は感じているので、その話もさせていただいた」と振り返った。

地方議員らに説明した自民党との交渉経過の裏側についても聞いてみた。維新は、企業団体献金の禁止も含めた10項目の要求を自民に提示していたが、あっさり断られていた。しかし5月29日、岸田首相の最側近である木原誠二幹事長代理から、一転、協議に応じる電話があったことが判明している。遠藤氏は、木原氏の名前は伏せながら、交渉の内幕を語り始めた。

遠藤氏は「電話のスタートは、『文通費をやります』と。『今国会中にやれ』ということも、僕は言っていた。そうでなかったらこの話に乗るわけがない」と語気を強めた。岸田首相の意向だという話が本物なのか、自民の森山総務会長に「裏取り」も依頼したという。その結果、「岸田首相は本気だ」と確信し、交渉がスタート。2日後の5月31日には、党首会談で合意文書を交わした。

その後、旧文通費は国会会期末までの法改正が不可能となり、維新は猛反発。参院で政治資金規正法の自民案に反対に回ることになる。遠藤氏は、「(旧文通費の法改正に必要な)有識者の日程が合わないって、もう1週間早く分かっていたら、衆議院で反対している。参議院でコロッと変えたわけじゃない」と悔しがる。

自民に「だまされた」と語るが、最初からだます気だったわけではなく、自民党内の統制が取れていなかったことが原因だと、遠藤氏は考えている。「岸田政権のやったことは信用できない。自民党の中でも、一生懸命最後まで頑張ってくれた幹部もおられて。一緒くたにして丸々ウソつきだというのは、ちょっと違う」と語る。森山総務会長、渡海政調会長、山口衆院議運委員長が、旧文通費改革をせめて衆院だけでも可決できないかと、国会最終日まで奔走していたと、感謝と敬意を繰り返した。

「先駆者」が離党…正念場の維新

説明会の翌々日、6月28日。東京・世田谷区の稗島進区議が離党した。現在2期目。新人時代はたった1人の維新区議で、街頭に立てば「大阪の政党でしょ?大阪に帰ったら?」と言われたという。党歴は8年、東京維新の会では「先駆者」の部類に入る。2023年にはトップ当選を果たした“逸材”だった。

稗島氏は、説明会での馬場代表の「後ろからバンバン」発言について、「地方議員の発言を、鉄砲を撃つように表現するのが、党の変質を象徴する発言だった」と振り返る。「維新は地方議員の声を大事にしてきた政党。最近トップダウンが目につくようになった」と残念がった。

都知事選で独自候補を擁立できなかった維新執行部は、「自主投票」ではなく「静観」、つまり「どの候補の支援もするな」と指示してきた。稗島氏は都内の市議と連名で、執行部に要望書も提出したが、変わることはなく、繰り返されるトップダウンに失望し、離党を決意したという。

維新は2012年の結党以来、離合集散を繰り返してきた。今また、最大の試練が訪れている。地方議員たちの疑心暗鬼は消えず、政党支持率も下降気味だ。かじ取りを誤れば、命取りになる。(フジテレビ政治部 鈴木祐輔(関西テレビ))

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