2022年W杯3位のクロアチアが、GSで敗退した要因をデータから読み解く「明暗を分ける要素になったのは…」【EURO2024コラム】

EURO2024開幕から2週間。大会はグループステージ(GS)を終え、決勝トーナメントに突入する。

ほとんどのグループがおおむね「順当」な結果に終わったなかで、サプライズと言えるのは、1年半前のカタール・ワールドカップで3位となり、FIFAランキングでもトップ10に入っているクロアチアの敗退、GS最終節でポルトガルを破ってグループ3位ながら初出場でベスト16に勝ち上がったジョージアの健闘、そしてフランス、オランダを尻目にグループDを1位で勝ち上がったオーストリアの躍進だろうか。

この項では、サプライズと言ってもいいクロアチア敗退の要因を掘り下げる。

●クロアチアは全24チーム中最も多くの得点機を作っていた

スペイン、イタリアという強豪国と同居した「3強1弱」のグループだったとはいえ、その「1弱」アルバニア、そしてイタリアにも後半アディショナルタイムに追いつかれて引き分け止まりに終わり、勝点は2。クロアチアはこの敗退によって、ルカ・モドリッチら「黄金世代」が築いてきた、2018年のロシアW杯準優勝を頂点とする一つの時代にピリオドを打った感がある。

3試合で3得点6失点、得失点差マイナス3は、スコットランド(マイナス5)に続き、ポーランド、ハンガリーと並んで底辺に位置する数字だ。それではクロアチアのパフォーマンスは、この数字に見合うほど不甲斐ないものだったのだろうか。

データを見ると、必ずしもそうとは言えない側面もある。例えば攻撃においてクロアチアは、24チーム中最も大きな「xG(ゴール期待値)」を記録しているのだ。

xGというのは、一つひとつのシュートについて距離、角度、コース、GKやDFのポジション、シュートの難易度などから得点の可能性をAIが算出し、それを積算した数字。『Opta』が算出したランキングのトップ5は次の通りだ。

1)クロアチア 6.55xG(3得点)
2)フランス 5.88xG(2得点)
3)ポルトガル 5.76xG(5得点)
4)スペイン 5.54xG(5得点)
5)トルコ 5.19xG(5得点)

クロアチアは、3試合を通じて6.55得点に値する決定機を作り出しながら、3得点しか挙げられなかった計算だ。痛かったのは、スペイン戦とイタリア戦で2つのPKを得ながら、ブルーノ・ペトコビッチ、モドリッチがそれを決められなかったこと。他にも、ゴール前でGKと1対1に近い形になったヘディングシュートを4本も決め損ねている。
クロアチアの平均ボール支配率は55.7パーセントと全体で7番目に高く、シュート数34も上から4番目。攻撃のボリュームは十分にあっただけに、いわゆる「決定力不足」が大きな痛手になったことは明らかだ。アタッカー陣の「個のクオリティー」が足りなかった、とも言えるかもしれない。

一方、6失点を喫した守備に関しては、その拙さがデータにも表われている。

被シュート数38、被枠内シュート15は、いずれも全体で下から10番目と、決して良くはないが、それほど酷い数字ではない。しかし、枠内シュートすべてのxGを積算した「被枠内シュートxG」は3試合トータルで6.6と、ジョージア(7.5)、ポーランド(7.4)に次いで3番目に悪い数字。これは、相手に「質の高い」決定機を数多く与えていることを意味する。実際、被シュート1本あたりのxGも0.44で、ドイツ(0.46)に次ぐ2番目に高かった。

文●片野道郎

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