市原隼人、淵上泰史、陣内孝則が「ダブルチート Season2」の舞台挨拶登壇。現場のムードメーカーは陣内

WOWOWで本日6月29日から放送・配信がスタートする、「WOWOW×テレビ東京 共同製作連続ドラマ ダブルチート 偽りの警官 Season2」(土曜午後10:00)の完成披露試写会が開催され、舞台挨拶に主演の市原隼人と、共演の淵上泰史陣内孝則、そして、監督の波多野貴文氏が出席した。

WOWOWとテレ東による初の共同製作となる「ダブルチート 偽りの警官」は、向井理主演で放送された「テレビ東京×WOWOW 共同製作連続ドラマ ダブルチート 偽りの警官 Season1」(テレ東系)では、主人公・多家良啓介(向井理)が警察官と詐欺師という正義と悪の二つの顔を使い分けながら、法を超えて悪人を華麗に欺いていった。

Season2では、巨大詐欺組織を食らう詐欺師で、海外拠点の特殊詐欺で逮捕された経験を持つ主人公・田胡悠人(市原)が、出所後に詐欺会社・ライドクリーンに入り込み、圧倒的な詐欺の知識とセンスを武器に、成り上がっていく。そんな田胡の目的を描く。

脚本を読んだ感想を聞かれた市原は「Season1では、テレビ東京さんが地上波ならではの作品となっていました。Season2は、WOWOWにしか成しえない表現手法で物語と人物を深く掘り下げることによってお客さまに伝わることがあると信じ、撮影の時間を紡いできました。こんなに迷い、考え、集中しながら作品と向き合ったのは初めてかもしれません。答えを求めれば、求めるほど答えが遠くなっていく感覚でしたが、僕自身の迷いや集中をそのまま役に投影することが一つのアプローチだと思っていましたので、心情を感情に深く深く入ることだけを考えて役に入っていました」と語り、真摯に役と向き合っている姿が感じられた。

さらに、詐欺師という役どころに関しては「二面性を持っている人間ですので、刑務所から出てきて詐欺師として振る舞っている時と、田胡悠人の本性や本音が出てくる時のギャップや言い方など、役に深く入っていこうとするほど怖くなりました。私生活でも笑顔が引きつったり、声が出なくなったりする感覚を覚えまして、これほど向き合っていける作品に立ち会わせていただけることが役者の醍醐味(だいごみ)だと改めて感じました」と撮影期間を振り返り、劇中で中国語を話していることも明かした。

次に、謎のサロンを主宰する詐欺師・海藤周役を演じた陣内が、意識したことを問われると「表面だけペロッとなめて、チャッチャと役作りをしたと思われないように、微妙な目線やセリフ回しを意識しました。60代の俳優としては一番伸びしがある俳優だと言われていますし…」と、冗談交じりに話し、「だいたい、作品が良い時は役者が良いんですよ。作品が悪い時はだいたい監督が悪いんですよ。それを分かって見ていただけるとうれしいです」と付け加えると、波多野氏が苦笑。市原と淵上が顔を見合わせて爆笑し、会場が笑いに包まれた。

さらに、海藤の個性的な衣装に触れて、「監督と衣装さんが一生懸命考えてくださって、言われたまま着ただけ。そのエキセントリックなファッションが、役を一緒にナビゲートしてくれていろいろなものがヒントになったり、キーパーソンキーになったりするので、個性的な衣装を作っていただいてありがたかったです」と感謝したかと思ったら「ごめんなさい、真面目な話をしてしまって…」と謝る陣内に、再び笑いが起こった。

もう一人の詐欺師・木崎竜一を演じた淵上は、陣内の後にマイクが回ってきて「非常にやりにくい…」と苦笑いしつつ、演じた役について語っていく。「木崎は、成り上がり精神が強くて欲深く、どんどん上を目指す男。それを、表情などで伏線として芝居に置いてきたつもりです。田胡と向き合う芝居や、海藤との会話などの中に、僕なりに伏線を張ってきたので、後々、回を重ねるにつれて分かるってくると思います。その、点と点がつながるようになればいいなと逆算しながら芝居を作ったつもりです」と回顧した。

市原と陣内とは、本作が初共演だったという渕上。「僕と市原さんが一番下になるんです。陣内さんを含めて、大ベテランの方ばかりで緊張感のある中で、カットがかかるたびに陣内さんが一ネタ言って現場を温めてくれるんです(笑)」とエピソードを明かすと、市原が「僕もそこに参加したいと思いつつも、役から離れてしまうと緊張感がなくなると思って、うらやましく陣内さんのことを見つめていました」と本音を吐露。渕上も「僕も市原さんも陣内さんも、みんなセリフの量が多くて、専門用語が多いのも伴って緊張感があったのですが、いつも陣内さんが現場を和やかにいい雰囲気にしていただいて助かりました」と感謝した。

それを受けて、真面目に「緊張感は常にあったと思います」と語る陣内。しかし、それには訳があるようで「なぜならば、僕は自分に優しくて人に厳しいんです。だから、僕のNGは全然気にならないです。セリフをかんで、もう一回やると言われても『気にしないでいこう!』と言いますが、他の誰かが失敗したら『いい加減にしようか』と厳しい顔で言うのでね…」と、自分のNGは棚にあげることを告白した。

市原と陣内は、映画「チェケラッチョ!!」(2006年公開)で親子役で共演した仲。約18年ぶりに本作で顔を合わせて、「すごくうれしかったです。照れくさいですけれど、少しでも大人になった自分を見ていただいて、胸を借りるような気持ちで芝居をさせてもらいました。現場で僕は、役から離れられず、下を向いて会話を続けることができなくなったので、すごく申し訳ないなと。本当は、もっと話をしたかったです」と、恐縮する市原。

一方、陣内は「初めて会った19歳の当時から、市原さんは出来上がっていて、特に顔は、主役を張っていく人だなという感じ。今回、18年ぶりにお会いしたら、シェイプアップされていて大人としてセクシーになっていた。とにかく、役に対する熱量がすごい。主演を張る人はこうでなければと思った」と再会を喜んでいたかと思えば、「現場で緩かったのは、僕とベンガルさんと橋本じゅんさん」と言って笑いを誘った。

続けて、Season2で第1話の演出を務めた波多野氏は「テレ東さんのSeason1とWOWOWさんのSeason2、そして、向井さんから市原さんに主演が変わるという、テイストの違いを意識して作りました」と振り返り「Season1を構築されてきた向井さんが、Season2の冒頭でちょっと叫ぶシーンがあるんですけど、ああいうところはどういう気持ちでどういう感動をどこまで爆発させるかみたいなということはすごく話をしました。市原さんも、3カ月経って慣れてきてるということだったので、少し声のトーンを低くしましょうかと。そんな話もしました」と、詳細に語った。

イベントの後半は、本ドラマの内容にちなんで日常のウソにまつわるエピソードについてトーク。その中で、陣内は、本作出演の直前に肺がんで手術をしていたことを告白し「転移もないし術前より元気になっています」と笑顔を見せた。

最後に市原が、視聴者に向けて「私はWOWOWとテレビ東京、上質でクリエイティブな作品を作る2局が大好きで大ファンですので、参加させていただけることを心からうれしく思います。司馬遼太郎さんが書いた作品の中で、人斬り以蔵のことを書いた本がありまして、冒頭に『不幸な男が生まれた』という文から始まる作品があるんですね。それと通じるようなものを感じました。かっこよくもなく、美しくもなく、決して美化されるような話でも主人公でもないんです。そんな男が求める道義というもの、誰かを犠牲にして成り立つ道義というものはあるのか。なぜ人をだますのか、その中で生きる、生き方ということに関しても深く私自身考えさせられました。そんなことを改めて感じていただける作品となっております。そこに合わせて詐欺師として巧妙な手口、会話劇やサスペンスをぜひ感じていただければ幸いです」とメッセージを送った。

© 株式会社東京ニュース通信社