「登れないなんて…」クマ被害で入山規制 登山客あきらめ顔/八甲田山系(青森県)初の週末

閉鎖された「宮様コース分岐点」につながる登山口。登山を楽しみに来県した観光客は、残念そうに規制線を見つめていた=29日午前

 相次ぐクマによる人的被害を受け28日に入山規制が始まった八甲田山系は29日、規制後最初の休日を迎えた。「こんなに天気がいいのに登れないなんて…」。登山道の入り口では、規制ロープを恨めしそうに見つめる登山客の姿が見られた。この日も「クマ捕獲」の知らせは入らず、受け入れ側の地元関係者の不安は続いている。

 午前10時過ぎ、約20人を乗せた八甲田ロープウェー(青森市)のゴンドラは山頂公園駅を目指していた。

 神奈川県から訪れた薬剤師の奥山幹さん(58)は、妻と息子とともに酸ケ湯から大岳まで登る予定だった。この日はルートを変え、ロープウエーで規制地域外の田茂萢岳周辺の散策コースへ。「ここはここで楽しい」と口にした。

 コースの一番奥には閉鎖された「宮様コース分岐点」に向かう登山道入り口、その先に赤倉岳や大岳がそびえる。規制ロープを前に「またリベンジしに来ようね」と家族で語り合っていた。

 八甲田は「日本百名山」の一つ。交通の便が良く、登頂も比較的簡単な上に豊かな自然にも恵まれ、全国の登山客に愛されてきた。しかし、今回の入山規制により最高峰の大岳に登頂できなくなった。

 酸ケ湯温泉は八甲田周辺を巡るツアーを、規制区域にある睡蓮沼を通らないルートに変えるなど工夫を施している。同温泉ガイド課の津川祐二さんは「ネガティブな印象がまん延しているが、八甲田を少しでも楽しんでもらいたい」と話す。

 従業員らによると、連日のクマ報道で宿のキャンセルも数件あり、日帰り客も少し減ったように感じるという。津川さんは「安全に楽しめる場所もたくさんあると伝えたい」と言葉に力を込めた。

 一方、八甲田の入り口に当たる萱野(かやの)高原に4月にオープンしたカフェ「ひょうたん茶屋」は静かな週末を迎えた。厨房(ちゅうぼう)を担当する50代女性は「山菜採りの帰りに寄るお客さんが多かったが、ここ連日はさっぱり」。週末に増えるはずのツーリング客も少なく「落ち着いた週末になりそう」と少し不安げに語った。

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