投票率アップだけじゃない…地方で導入広がる「移動投票所」 期日前シフト進める自治体も〈鹿児島県知事選7月7日投開票〉

ワゴン車に設置された投票箱へ票を投じる有権者=29日、指宿市小牧

 投票所が遠い地区などに投票箱や立会人を車で運び、「移動期日前投票所」を開設する自治体が増えている。7月7日投開票の鹿児島県知事選では2020年の前回より七つ多い10市町が、計128カ所(前回比69カ所増)で実施。交通弱者対策として、送迎バスや移動費負担などの支援を取り入れる動きもある。

 29日、指宿市小牧の山間部にある畠久保公民館。大粒の雨が降り続く中、ワゴン車の荷室に据えられた投票箱に5人が票を投じた。近くの平原スエさん(85)は「これまでご近所さんと車で乗り合わせて行く必要があった。ここなら歩いて2分。ありがたい」。

 同市は31あった投票所を27カ所に再編。4カ所に初めて移動投票所を設けた。1カ所につき1時間15分。市選挙管理委員会によると、この日は33人が投票した。30日も同じ地区を回る。

 人口減や選挙事務の効率化を理由に投票所の統廃合が進む。県内では08年知事選の1300から、今回は1025カ所に減った。移動投票所は有権者の投票機会の確保などが目的。予定する日時にワゴン車などで巡り、投票してもらう。

 県選管によると、県内では19年参院選で初めて2市が導入。今回の知事選では指宿のほか、霧島市、姶良市、肝付町の3市町が新たに取り入れた。

 日置市は、38の投票所を8カ所にした22年からバスによる移動投票所を採用。市選管によると、投票管理者ら150人分の人件費に加え、ポスター掲示板が198から70カ所になり、500万円程度のコスト節減となった。

 しかし、車内での投票は待ち時間がかかる。今回は車内ではなく公民館など投票できる施設を職員らが回る「巡回期日前投票所」を試みる。期日前投票者数が全投票者数に対し半数近くを占めるとし、担当者は「これだけ期日前が浸透しているのであれば、投票当日の投票所を減らしコスト削減につなげるのが合理的」と言う。投票の足確保の支援として、コミュニティーバスや乗り合いタクシーの無料券を配布している。

 19年から導入する南九州市は、県内最多の30カ所を巡回。広報誌や地区の放送などで日時の周知を図る。市選管担当者は「地域によるが、投票できるのが1~2時間程度に限られてしまう」と課題を挙げる。開設直後に混雑が予想されることなどをホームページなどで呼びかけている。

 指宿市では大雨の影響か、2人しか訪れない投票所もあった。効率的な運営と投票機会確保とのバランスをどう図るか、各自治体の模索が続く。

〈別アングル〉ワゴン車に設置した投票箱へ一票を投じる有権者=29日、指宿市小牧

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