ボン・ジョヴィ新作『Forever』:デビュー40周年のバンドによる新たなチャプター

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第85回。今回は、6月に発売されたボン・ジョヴィ(Bon Jovi)の新作アルバム『Forever』について。

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デビュー40周年に発売した新作

デビュー40周年を迎えたボン・ジョヴィ。2024年は、彼らにとって次なるチャプターに向けて走り出す特別な年になると言えるでしょう。Disney+で公開となっているドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight』で、リアルなボン・ジョヴィストーリーが明らかになったことで、最新作『Forever』に対する彼らの思いが、より深く心に響きました。

40周年という節目にアメリカを代表する世界のロック・バンドは、今だからこそ原点に戻りボン・ジョヴィ・ロックの真髄となるサウンドを新作を通じて聴かせてくれました。また、アルバム収録曲には、ソングライターであり、アーティストとしても輝かしいキャリアを誇る、エド・シーランとワンリパブリックのライアン・テダーが参加したことは驚くべきことでした。

また、日本盤CDデラックス・エディションのBlu-rayに収録されているジョン・ボン・ジョヴィのインタビューの中では、来年の来日を示唆していました。これは嬉しいニュース。喉の手術によるリハビリがうまくいき、長期に渡るライヴ・ツアーでも、完璧に声を出せるまでに至ったということだと理解します。

 

アルバム収録楽曲

それではここから、アルバムに収録されている楽曲を私の視点ではありますが、紹介させていただきます。

リード曲となった「Legendary」は、コンサート会場中が大合唱する光景が目に浮かぶボン・ジョヴィ賛歌となっています。ボン・ジョヴィの歩みがそのまま一つの曲に仕上げられたファンには涙ものの楽曲です。「We Made It Look Easy」は、バンドの青春時代を彷彿とさせる歌詞とノスタルジックなメロディ・ラインが特徴。ちょっと抑え気味に、ソフトに歌うジョン。喉の術後の新たなヴォーカル・スタイルだといえます。

ボン・ジョヴィを象徴するロック・サウンドの一つであるトーキング・モジュレーターを使った「Living Proof」は、セカンド・リード・トラック。リッチー・サンボラではないのが残念ではありますが、やはりこの音を聴くと、ボン・ジョヴィ復活を自然に受け入れてしまいます。

カントリー・タッチのサウンドによる「Waves」は、ボン・ジョヴィが新たに切り拓いたカントリー・フィールドでの成功を、さらに決定付ける1曲として存在するでしょう

前述したように、新作では、外部ソングライターとのコラボレーションが新たなチャレンジとなっていますが、「Seeds」はワンリパブリックのライアン・テダーが共作者。確かに、新しいサウンドへのチャレンジとなっています。バックトラックのアレンジは、後期のサイケなビートルズを彷彿とさせます。

「Kiss the Bride」は、ジョンが長年の友人でありミュージシャンのビリー・ファルコンとの共作で、家庭人ジョンの娘への思いが伝えられています。「The People’s House」は、バック・コーラスが印象的で、ちょっぴりソウルフルなロックに仕上げられています。ハウスを世界に見たて、自由への道を歌にしています。

「Walls of Jericho」は、デヴィッド・ブライアンのコーラスが印象的なアコースティック・ロック。人間のもたらす力を信じる歌。「I Wrote You a Song」は、ラヴ・ソングに聴こえるけれど、ジョンが自分自身を表現した歌のようにも聴こえます。

「Living in Paradise」は、なんとジョンとエド・シーラントの共作。ソングライターとして確固たる地位を築いている二人が、なぜ今一緒に曲を書いたのか?家族ぐるみの付き合いであるということですが、ポジティヴな思いを綴った、ジョンと奥さんのドロシアの歌であり、曲の持つパワーを感じる1曲です。

「My First Guitar」は、ジョンが少年時代のギターをテーマにしたノスタルジックな歌。「Hollow Man」は、等身大のリアルなジョンの思いが切々と歌われている曲となり、これで本編は締め括られます。

 

新チャプターとリッチー・サンボラ

新作『Forever』は、ボン・ジョヴィが世界に向けて、自分たちの音楽は永遠に存在していくと宣言したアルバムと言えます。プロデューサーとして知られるジョン・シャンクスがメンバーの一員としてバンドを支え、オリジナル・メンバーのデヴィッド・ブライアンとティコ・トーレスは、新しく生み出すサウンドが、ボン・ジョヴィとしての道にそれないように、うまく導いているかのようです。

新作を聴き、来年に向けてのツアーが、80年代から駆け抜けてきたバンドのさらなるステップ・アップとなることを心から信じ、これからも応援したいという思いになりました。

ちなみに、『Forever』の発売にあわせるかのように、リッチー・サンボラも動き出しました。ソロ曲を4週連続配信。これはお互いがラヴ・コールを送っているということなのでしょうか? それぞれの微妙な発言が続いていますが、リッチーの歌声も健在でソロ作品には彼の魂を感じます。特に「Believe (In Miracles)」を聴くと、ようやく音楽への思いを再燃させたリッチーに再び巡り会えたようです。

物事を進めるには段階が必要です。今、ボン・ジョヴィとリッチーがその途中経過にあると信じて、また新たなチャプターが開けるのを楽しみに待ちたいと思います。

Written By 今泉圭姫子

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