杉田雷麟&寛一郎、熊と遭遇した体験を回顧 本物の“マタギ”から学んだ自然との関わり方

映画『プロミスト・ランド』の初日舞台挨拶が6月29日にユーロスペースにて開催され、杉田雷麟、寛一郎、飯島将史監督が登壇した。

本作は、第40回小説現代新人賞を受賞した飯嶋和一の同名小説を、杉田雷麟と寛一郎のW主演で映画化。熊の人里への出没や、技術と知識をもつ猟師の不足も全国的に問題となるなか、20代のふたりが、伝統的な狩猟の知恵と技術をもつ「マタギ」の世界に飛び込んでいく姿を描く。

撮影は昨年5月まで山形で行われ、実際に「マタギ」と呼ばれる人たちにも取材をしたという。寛一郎は「山での処世術や登り方などはもちろんですが、一つ一つの自然に対してどういうスタンスでいるのかを、肌で感じ取ることができた時間でした」と役を体にしみこませていったという。

杉田が演じた信行は、寛一郎扮する熊狩り禁止の通達に背いて山に入る礼二郎の弟分。杉田は「礼二郎とは対比的な関係」と信行について述べると「礼二郎は筋が通っている人物ですが、信行は迷いながら流されてしまうキャラクター。すがる気持ちで礼二郎についていくのですが、僕自身も信行と環境は違いますが、俳優という仕事も流されたり、悩んだりすることはあるので、気持ちは作りやすかったです」と役作りについて述べる。

劇中では、熊をさばいているシーンも登場する。寛一郎は「奇跡的に本物の熊が獲れたんです」と語ると「さばくシーンは本物の熊を使ったので、臓器も本物。心臓を4つに切る儀式もあるのですが、その心臓がとてもきれいで嫌悪感はなかった」と振り返る。杉田も「本当にきれいで神秘的なシーンでした」と追随すると「熊の皮も本物。想像以上に重く油でこすれていて温かさを感じました」と本物の説得力のすごさに脱帽する。

また熊を発見するシーンで、寛一郎は本物の熊を発見したという。寛一郎は「本番直前だったのですが、すごく興奮した」と回顧すると「でも僕以上に、撮影監修に立ち合ってくださっていた猟友会の方々が奮い立っていました」と発言し会場を笑わせる。杉田も「寛ちゃんが立って『熊だー』と興奮していたのを覚えています。僕自身も本物の熊を見るのは初めてだったので、本当に生命体として熊がいるんだ……と実感できました」と貴重な経験だったことを明かす。

「マタギ」という文化を後世に伝えるというメッセージが込められた本作。飯島監督は「僕はこの作品がデビュー作なので、なにかを継承するというレベルではまだないです」と苦笑いを浮かべるが「これまで僕もいいスタッフ、監督と仕事をさせてもらってきたので、いいところだけはしっかりの継承して、残せるように頑張りたいです」と意気込む。

また『プロミスト・ランド』というタイトルにちなみ「果たしたい約束」というお題でトークが展開する。杉田は「3~4年前から映画監督をやりたいと思っていました」と語ると「作品に入るたびに、簡単なことではないと実感しています。でもいろいろな俳優さんから『若い世代が映画を撮った方がいい』と言っていただきます。作品で知り合った素敵な方もたくさんできました。やるなら本気でやらないと。映画を撮って、皆さんにお見せすることを約束したいです」と誓いを立てると、証人となった観客から大きな拍手が巻き起こった。

最後に寛一郎は「率直に言うと、ニッチでナローな映画。好みの別れる作品だと思う」と述べると「僕は好きな映画。古き良き日本映画が好きなので、これから作られる新しい映画の架け橋、マタギになれば……」と作品に込めた思いを語ると、杉田も「好き嫌いが分かれるかもしれませんが、少しでも映画のなかに描かれている自然が、心に残ってもらえたら嬉しいです」とコメント。飯島監督も「助監督を長くやっていましたが、そのときは作品が完成すると、次の作品に気持ちが切り替わっていました。でも今回はお客さんの感想を聞いて、さらに映画が育っていく感じがしています。これから全国公開になりますが、作品を育てていただければ」と呼び掛けていた。
(文=磯部正和)

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