秋の富山県知事選に向け、自民党県連と政策協定を結んだ現職の新田八朗氏は29日、報道陣の取材に対し「人口減少社会の中でも社会機能をしっかりと維持し、前に進めていきたい」と県政のかじ取りを再び担う意欲を改めて語った。県人口の推計値は76年ぶりに100万人を下回り、人口減少対策は待ったなし。新田氏は東京一極集中の是正に向けても国に働き掛けていく考えを強調した。
●自民三県のつながり評価
新田氏が自民県連と結んだ協定書では、富山県の限りない発展と県民の幸せを実現することを政策推進の基本に掲げた。
能登半島地震について、同一規模の災害に対して同一の支援を国に求めていくことのほか、物価・エネルギー価格高騰への強力な対策を講じること、北陸新幹線の大阪までの早期開業、ブランディング戦略の推進、文化観光による地域活性化などを盛り込んだ。
人口減少対策では、生産性の向上やデジタル化の促進をはじめ、人口減少下を前提とした新しい社会経済システムの構築に向け、前例にとらわれない議論を進めるとした。
新田氏は調印式で「協定書に基づく各項目について、県政をさらに前に進めていく」と強調し、自民県連の橘慶一郎会長と固く握手。引き続き県関係国会議員や県議、市町村議と連携して取り組む意欲を示した。
米原蕃県連会長代行は閉会のあいさつで、新田氏について、石川県の馳浩、福井県の杉本達治両知事との関係が深いと指摘し「就任以来、北陸三県の横のつながりが広くなっていると感じている」と評価した。その上で、東京一極集中の是正に向け新田知事が先頭に立って進めるよう求めた。
終了後の報道陣の取材に対し、新田氏は東京一極集中について「国家全体として、人口減少局面にある中で人や金、情報といった資源配分をどう適切に行うか。われわれ地方の声も聞いていただきたい」と述べ、政府がリーダーシップを取るよう訴えるとした。
一方で政策協定書の14項目には、新田氏が県政の中心に据える、幸せ実感を意味する「ウェルビーイング」の文言が盛り込まれなかった。新田氏は、ウェルビーイングは自民党の政策にも取り入れられ、定着が進んでいるとし「文言が有る無しに関わらず、粛々と強力に進めていくことになる」と述べた。
●手応え感じ2期目を準備 一問一答
●初めてで緊張
報道陣の取材に応じた新田八朗知事との主なやりとりは次の通り。
調印式を終えた感想は。
―初めてで緊張したが、滞りなく終えることができてほっとしている。
前回選では自民の推薦を得られなかった。
―県政を前に進めるために危機管理事案に対応し、県成長戦略に基づく事業を進めてきた。手応えを感じながら2期目の準備を進める段階に入る。
自民の推薦は心強いか。
―そうですね。協定書に基づく政策を練り上げ、県民に訴えていく。
他党との政策協定は。
―一つ一つ話し合い、互いに適正で必要だと思えば結べるものは結びたい。
前回支援を受けた旧統一協会(世界平和統一家庭連合)との関わり方は。
―旧統一協会のことも含め、自民のガバナンスコード(統治指針)をしっかり踏まえ、今後の政治活動を行っていく。
●都知事選、支持候補は明かさず
東京都知事選に期待することは。
―他の自治体の選挙についてコメントする立場にない。ただ、掲示板についてあり方が問われている。どこの選挙でも起こり得る。適正に運用されるように、法律面で足りないところがあるなら整備してほしい。
角田悠紀高岡市長が都知事選で、前広島県安芸高田市長の石丸伸二候補を応援している。
―私は(特定候補の支援を表明する考えは)特にない。角田さんは(石丸氏と)政治家同士として仲良くしており、信念に従った行動だと思う。
石丸候補は東京一極集中の是正を掲げている。
―誰が都知事になっても、人口や税収を減らすことを政策として実現できるかは確信が持てない。