国家公務員の退職金、中途でも「1000万円」超えは余裕?内閣官房内閣人事局のデータから検証

国家公務員と一般企業の退職金額を比較

6月は定額減税が実施され、手取り額が増えた人も多いかと思います。

ただし、止まらない物価上昇のあおりを受け、実際には手取り収入が増えた実感がわきにくいことも事実。

物価上昇や収入の変動の影響を受けることなく、安心して生活を送りたいものですね。

日本の公務員は安定した雇用と手厚い福利厚生が魅力ですが、その退職金制度も多くの人にとって大きな関心事です。

では、公務員に転職して定年まで勤務した場合、どの程度の退職金を受け取れるのでしょうか。

今回は、公務員と一般企業の退職金事情を比較しながら、老後の準備について考察していきたいと思います。

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「国家公務員」と「地方公務員」は別?

公務員とは、国や自治体に勤務し、営利を目的とせず社会の基盤を支える役割を果たす人々を指します。

具体的には、「国家公務員」と「地方公務員」に分かれ、さまざまな職種があります。

  • 国家公務員:自衛官、裁判官、検察官、国会議員、大使
  • 地方公務員:教員、役場職員、警察官、消防官、自治体議員

地方公務員の場合、勤務する都道府県や市町村によって給与水準や退職金などの待遇が異なるため、今回は国家公務員の定年退職金に焦点を当ててみましょう。

次の章では、国家公務員の定年退職金の平均受給額について詳しく見ていきます。

後半では、これを一般企業の退職金と比較しつつ、公務員としての老後の準備について考察してみます。

【国家公務員】定年退職金の平均支給額を勤続年数別に確認

国家公務員が定年退職時に受け取る退職金は、勤続年数により金額が変わります。

内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」によると、勤続年数ごとの国家公務員の退職金平均支給額(定年退職)の推移は以下のとおりです。

【写真1枚目/全3枚】勤続年数別・国家公務員の退職金平均額/次ページ以降で一般企業の退職金とも比較!

【常勤職員】

  • 5年未満:158万7000円
  • 5年~9年:446万8000円
  • 10年~14年:713万7000円
  • 15年~19年:1159万1000円
  • 20年~24年:1309万2000円
  • 25年~29年:1663万2000円
  • 30年~34年:1991万7000円
  • 35年~39年:2303万8000円
  • 40年以上:2234万7000円

【うち行政職俸給表(一)適用者】

  • 5年未満: 84万8000円
  • 5年~9年:451万8000円
  • 10年~14年:675万7000円
  • 15年~19年:1016万6000円
  • 20年~24年:1352万4000円
  • 25年~29年:1625万6000円
  • 30年~34年: 2037万円
  • 35年~39年:2189万1000円
  • 40年以上:2139万1000円

勤続年数が長ければ長いほど、退職金額は増えるのは当然のことです。

これは一般企業の会社員においても同様ですね。

ただし、勤続年数が同じでも、自己都合による退職や応募認定での退職の場合、退職金の支給額に大きな違いが生じることがあるのは覚えておきたいですね。

退職理由が「定年」である国家公務員の退職金の平均額はいくらか

内閣官房の退職金に関する調査によると、国家公務員の退職金は下記のとおりです。

【国家公務員】理由が「定年」である退職者の受給者数と平均支給額

常勤職員の平均支給額

  • 定年:2112万2000円
  • 応募認定:2524万7000円
  • 自己都合:274万5000円
  • その他:212万1000円
  • 計:1104万3000円

うち、行政職俸給表(一)適用者の平均支給額

  • 定年:2111万4000円
  • 応募認定:2250万円
  • 自己都合:327万5000円
  • その他:230万円
  • 計:1391万円

常勤職員と行政職俸給表(一)適用者の平均支給額が「2000万円」を超えたことから、国家公務員の定年退職金が一般的に2000万円を超える可能性が高いと言えます。

応募認定とは早期退職募集制度のことです。

早期退職募集制度とは、定年前に退職する意思を有する職員の募集を行い、各省各庁の長等に認定を受けて指定された日に退職した場合には、自己都合退職した場合より退職手当の額が割増しされる制度です。

このため定年を理由として退職する場合に比べて、退職金額が高くなるというわけです。

それでは、一般企業の会社員の定年退職金はどうでしょうか。

企業規模別にまとめているので、ぜひご自身のお勤めの企業と照らし合わせてみてください。

一般企業の会社員「定年退職金」はいくら?企業規模別に確認

一般企業の会社員「定年退職金」はいくら?企業規模別に確認

前章では、公務員の定年退職金の相場について確認しましたが、大企業や中小企業に勤める会社員の定年退職金はどのくらいなのでしょうか。

中央労働委員会の「令和3年賃金事情等総合調査(確報)」によると、資本金5億円以上で労働人材が1000人以上の企業、通称「大企業」におけるモデル定年退職金は、大学卒と高校卒それぞれ以下の結果となりました。

  • 大学卒:2563万9000円
  • 高校卒:1971万2000円

学校を卒業後ただちに入社して標準的に昇進した者のうち、事務・技術(総合職相当)に該当する人のみのデータとなります。

一方、東京都産業労働局の調査データによると、企業規模が300人未満の企業、いわゆる中小企業の定年退職金は以下の結果となりました。

【大学卒】

  • 企業規模10~49人の退職金:979万3000円
  • 企業規模50~99人の退職金:1141万8000円
  • 企業規模100~299人の退職金:1323万円

【高校卒】

  • 企業規模10~49人の退職金:880万3000円
  • 企業規模50~99人の退職金:1065万9000円
  • 企業規模100~299人の退職金:1204万5000円

※卒業後すぐ入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準

上記を比較すると、大企業と中小企業では約1000万円もの差があります。

さらに、中小企業では「退職金が支給されない」というケースも少なくありません。

公務員や大企業では定年まで勤めることで相当額の退職金を期待できますが、中小企業の場合は自己資金で老後の生活資金を準備しておく必要があるでしょう。

いざというときに頼れる資産をつくっておこう

今回は公務員と一般企業における退職金事情について考察してきました。

両者ともに、勤務期間が長ければ長いほど受け取れる退職金が増加する傾向があります。

公務員というと安定したイメージがありますが、たとえ公務員であっても昨今の経済情勢では、必ずしも安心して老後を迎えられるとは限りません。

かつては一度勤めた会社に長期間勤めることが一般的でしたが、現在ではステップアップや新たな挑戦のために転職することも少なくありません。

このような働き方の自由度の高まりが、退職金の受け取りについても影響を与えています。

基本的には同じ企業で長く働くほうが、退職金額も年収も高くなります。

自分自身のキャリアプランや資産形成を通じて、将来の資産計画をしっかりと考えることが重要です。

現代では「NISA」や「iDeCo」の登場により、個人でも資産運用をはじめる人が増えてきました。

まずは資産形成の方法について、情報収集するところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

  • 内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
  • 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
  • 厚生労働省 中央労働委員会「令和3年賃金事情等総合調査(確報)」
  • 厚生労働省「退職給付(一時金・年金)の支給実態 」

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