売掛金回収で風俗店紹介疑い 富山のホストクラブ経営者ら逮捕

ホストクラブを家宅捜索し、段ボール箱を運び出す捜査員=29日午前3時半ごろ、富山市総曲輪

 富山市総曲輪にあるホストクラブでの売掛金の支払い(ツケ払い)が困難になった20代女性客にデリバリーヘルス(派遣型風俗店)を紹介したとして、富山、石川の両県警の合同捜査本部は29日、職業安定法違反(有害業務目的紹介)の疑いで、ホストクラブを経営する富山市の男ら2人を逮捕した。女性が抱えていた売掛金は数十万円に上るとみられ、実際にデリヘルで働いていたという。

 逮捕したのは、ホストクラブ経営者の男(30)=富山市綾田町=と、元ホストでパート従業員の男(29)=同市柳町=の両容疑者。逮捕容疑は共謀し、2023年7月下旬ごろ、デリヘルの業務に就かせることを知りながら、女性を風俗店営業者に紹介し、雇用させた疑い。両容疑者とも容疑を認めているという。

 富山県警によると、ホストクラブは富山市総曲輪1丁目のビル内にある「クラブ LUXIS(ラグシス)」。元ホストの男は、店のホストを務めていた際に被害女性を接客していたとみられる。

 ホストクラブの高額な飲食代を店やホストが立て替えたことにし、客に後払いさせる仕組みを「売り掛け」と呼ぶ。県警によると、売り掛けの支払いに窮した女性は、紹介されたデリヘルに勤務。今年に入り、女性から「ホストに借金を背負わされた。性風俗店で働かされている」という相談が警察に寄せられ、県警が捜査していた。

 県警は29日未明、このホストクラブを家宅捜索し、関係資料を押収。捜査員が段ボール箱を運び出した。

 県警は、暴力団組織や、交流サイト(SNS)などでつながり特殊詐欺や強盗を働く「匿名・流動型犯罪グループ」(通称・トクリュウ)の関与も視野に捜査するとともに、富山市桜木町など県内の繁華街での取り締まりを強化する。

悪質クラブ、全国で摘発受ける

 店やホストが飲食代を肩代わりして客に後払いさせる「売り掛け」を巡って、悪用するホストクラブが全国で増えており、社会問題化している。借金を背負った女性客に風俗店勤務や売春を強いたとして従業員らが摘発される事例が相次ぐ。

 警察庁などによると、警視庁が今年1月、売掛金を支払わせる目的で女性客に売春の客待ちをさせたとして、強要容疑で元ホストの男を逮捕。2月には宮城県警が、女性客にデリヘルを紹介したとしてホストクラブ店長らを職業安定法違反容疑で逮捕した。紹介のマニュアルもあったという。

 警察庁は、悪質なクラブの背後で暴力団やトクリュウが不当な利益を得ている可能性があるとし、昨年11月に全国の警察に取り締まり強化を通達。松村祥史国家公安委員長は今月26日、国内有数の歓楽街である東京都・歌舞伎町を視察し、法改正も含め「一歩踏み込んだ対策が必要」と述べていた。

 歌舞伎町の一部のホストクラブは、4月から売掛金の撤廃を開始した。

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