「つっぱり棒」誕生から49年! 整理収納アドバイザーが伝授する便利活用術ですき間を収納スペースに

平安伸銅工業の竹内香予子代表取締役(右)と猪野聡開発グループ(C)日刊ゲンダイ

両端が伸縮自在のつっぱり棒は、壁や家具の間に固定してモノをかけたり、収納スペースをつくったりできる便利グッズ。家具と天井を固定する地震対策でも利用される。そんなお役立ちアイテムが誕生して今年で49年。最近は、空間活用の点でも注目される。便利な活用法を紹介しよう。

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つっぱり棒は工具を使わず、壁に穴を開けることもなく設置できる。持ち家派はもちろん、賃貸派は特に重宝する。いまではどの家庭にもある便利なグッズを初めて売り出したのは平安伸銅工業で1975年。ほぼ半世紀で広く普及し、その種類は数百に上る中、大きく4つに分けられる。

①バネ式=バネの力でつっぱるタイプでもっとも一般的

②ネジ式(ジャッキ式)=ネジで長さを調節して固定するタイプでバネ式より重いモノを支えられる

③つっぱりポール=天井と床に縦に設置するタイプ

④つっぱり棚=つっぱり棒に棚板をつけたタイプ

いずれも棒の色や素材のほか、太さや長さが異なり、その組み合わせで耐荷重が変わる。太い方がより重いものを支え、長くなるほど滑り落ちやすくなる。

滑落防止の設置法

つっぱり棒を使用する上で、この滑落はネックだろう。時間が経つにつれて少しずつズリ落ちてくる、アレだ。平安伸銅工業の3代目社長・竹内香予子氏が言う。

「つっぱり棒は、説明書の注意事項を守って設置していただければ、基本的に滑落しません。残念ながら多くの方が説明書を読まないため滑落するようです」

まずバネ式は、使用したい場所に一端を当ててから長さを調節すると落ちやすい。では、滑落を防ぐ設置の仕方は?

「バネ式はバネの反発力を使ってつっぱるのが特徴です。その力をしっかりと利用するには、①つっぱらせたい場所の幅から1~2センチほど余分に伸ばして設置したい場所に一端を当てます②もう一方の端から力を入れてぎゅっと押し込んで棒を縮めながら目的の場所まで移動させます。これが正しい使い方です」(竹内氏)

ネジ式は、太いパイプと細いパイプからなり、2つのパイプをネジで貫通させることで固定される(写真(A))。ところが、細いパイプの表面にネジが当たるくらいで固定すると、落ちやすい。

2本で棚をつくる

さて、1級整理収納アドバイザーの松澤りえさんは2022年、つっぱり棒マスターを取得。多くの人につっぱり棒の活用法をレクチャーする一方、夫と2人の子供と住む神奈川県の自宅でもさまざまなモノの整理収納に利用している。

「つっぱり棒は取り外しが簡単で、手軽に収納場所を増やすことができます。イメージが変わったら、違う場所で再利用するのも可能。棒2本で棚にもなります」

松澤さんの収納は、なるべく「モノを見せたくない派」。そこで松澤さんの自宅にお邪魔して、活用法を拝見した。

まず玄関では、つっぱり棒2本で棚を形成(写真(B))。「玄関に置く靴は1人2足まで」をルール化することで、この棚の上下で4人分の靴を置くことができる。これで玄関がスッキリする。棒の色は艶消しの黒。艶消しタイプは存在感が薄くなり、目立たなくなる。収納部屋では、つっぱり棒を多用し、収納力をアップ。2本のつっぱりポールの間に棒を渡して、マリンレジャーで使うドライスーツなどを吊るしていた。

理想の形にできる

スゴイ! と思ったのは写真(D)。つっぱりポールとカーテンなどを組み合わせた自家製倉庫だ。トイレットペーパーなどを置いているという。

「材料の組み合わせ次第で、その場所にジャストフィットな理想の収納をつくることができます」

風呂場入り口では、扉の手前につっぱり棒を張り、バスマットをかけていた(写真(E))。ここでの棒は、防水加工タイプ。トイレの手洗い場所下部では、つっぱり棒に洗剤をかけたり、予備のトイレットペーパーを置いたり。デッドスペースをとにかく活用する。

一方、洗面所ではゴミ箱のリフトアップに2本の棒を使っていた(写真(G))。「箱を浮かせることで掃除がしやすい」とは名案だろう。箱は丸より四角い方が安定する。

「棒の上に置くモノの重さによって、100円ショップや300円ショップ、メーカー品などの棒を使い分けています」

松澤さんのアイデアが光ったのは、棚やすき間でのつっぱり棒の活躍だ。たとえばキッチンの小さな空間では2本の棒を元に棚をつくってまな板をかけたり(写真(H))、書類棚のすき間につっぱり棒で増設した棚にはレターパックや読みかけの本を置いたりする。無駄なくスペースを活用するのがとにかく上手だった。

何と自宅3階には、つっぱりツールに加え、角材やベニヤ板などを組み合わせて、ご主人の趣味部屋も作成したそうだ。最後に松澤さんが言う。

「片付けが苦手な人ほど収納グッズを買おうとしますが、基本的に買ってはいけません。さらにモノを増やすだけ。空いたスペースを見つけ、そこを収納スペースとしてよみがえらせることが大事なのです」

部屋をじっくり見回して、空いた空間やデッドスペースを見つけたら、ラッキーだ。そこをつっぱり棒などで収納スペースに活用できれば、部屋がグンとスッキリする。

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