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この春、鳥取県消防学校には25人の消防士の卵たちが入校しました。
入校から2か月足らずで行われたのは、日頃の訓練の成果を発揮する「ポンプ車操法大会」。
父も兄も消防士、消防一家に生まれたという訓練生や、千葉県で消防士として働いていた経験を持つ訓練生…それぞれが胸に秘めた思い、彼らの熱い1日を取材しました。
5月27日、取材班が消防学校を訪れると、なんだかいつもとは違う緊張感が漂っていました。
それもそのはず…
教官
「この1か月間、みんな課外の時間も訓練やっていた成果を十分見せてください」
1か月間行ってきた訓練の成果を発揮する、「ポンプ車操法大会」が行われるというのです。
「火点は前方の標的」
「操作はじめ」
この大会は消防ポンプ車を用いて行うもので、水槽から給水し、火災現場を意識した火点と呼ばれる的にめがけて放水します。
的確な命令や伝達ができているかに加え、消火活動の基本となるホースの搬送方法や延長方法、放水方法など一連の動作の正確性やタイムを競います。
4つの班が得点を競うこの大会、審査は、教官に加えて鳥取県の現役消防士が行います。
1か月前にはまっすぐ伸ばすことができなかった消防ホースも、今ではしっかり伸ばせるように。
訓練生たち、一歩ずつ着実に成長を遂げています。
そんななか、自分の出番を終え、頭を抱える訓練生の姿がありました。
「金具を持ってホースを延長しないといけないんですけど、金具をぶん投げてしまって、その分ホースがゆがんでしまって…」
悔しい気持ちをあらわにするのは、
本池泰生さん、20歳。
鳥取県消防学校 初任総合教育9期生 本池泰生さん
「兄と父が消防士で、活躍を小さい頃から見てきました。それで、絶対に自分は消防士になるんだという気持ちを持って、中学校高校と勉強してきて、専門学校に行って、この西部消防に入りました」
父、そして3つ上の兄も消防士という消防一家。
辛い訓練中には、憧れの父と兄のような立派な消防士になりたいと自分を奮い立たせているといいます。
鳥取県消防学校 初任総合教育9期生 本池泰生さん
「災害の時に、逃げる側でなくて助ける側なので、大災害のときには頼りになるんですけど、家からはいなくなって、現場に行って助けるという姿を見て、とてもかっこいいなと思いました。
父のような立派な消防士になりたいと考えています」
一方、冷静な面持ちで大会に臨んでいたのは、山根樹也(みきや)さん、24歳。
実は彼…
鳥取県消防学校 初任総合教育9期生 総代 山根樹也さん
「入校以前は千葉県で消防士をやっていまして、やっぱり地元が好きということで、こっちを受けて今に至っています」
千葉県消防学校を卒業後、消防署で3年間勤めていましたが、地元鳥取県で働きたいとの思いからUターン。
消防士は各自治体で採用される地方公務員であるため、山根さんのように消防士としての経歴があっても、別の自治体では再び採用試験を受け合格しなければいけません。
そして、採用後は鳥取県の消防活動の基礎を学び、同期との絆を深めるためにも、消防学校に入校することになっています。
(※自治体や場合によって異なります)
山根さんは、9期生の中では頼れるリーダー的存在で、教官と学生の間を取り持つ「総代」を務めています。
「こっちで押さえて、揃えていく感じ」
訓練中に同期からアドバイスを求められることも少なくありません。
鳥取県消防学校 初任総合教育9期生 総代 山根樹也さん
「聞いてくれるのはめちゃくちゃ嬉しいので、どんどん聞いてって言っています」
25人のうちただ一人、消防士としての経験がある山根さん。
消防の現場を知っているからこそ、誰よりも基本の大切さを理解しています。
鳥取県消防学校 初任総合教育9期生 総代 山根樹也さん
「似た現場というのはいっぱいあったんですけど、一つ一つ何かが違うので、そういったときに判断が鈍ってしまう。基本的なものができないと応用の操作のとき手間取ってしまうので、いまこうした機会をいただけて嬉しいですし、その基本の重要さをみんなにも伝えるようにしています」
様々な思いを抱えながら大会に臨んだ25人。
1位に輝いたグループのタイムも、トップレベルの消防士や消防団員に比べると10秒以上も遅いとのこと。
まだまだのびしろたっぷりです。
一人前の消防士をめざして、彼らの厳しい訓練の日々は続きます。