「動脈硬化」はがんの一種? 治療が難しいのもそのためではないのか

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【医者も知らない医学の新常識】

「動脈硬化」は変性したコレステロールが動脈の壁に沈着し、それがプラークという塊になると説明されています。しかし、その正確な仕組みについては、まだ不明な点が多いのが実際です。コレステロールの値が高いだけでは、動脈硬化が起こることの説明にはならないのです。

それでは何が動脈硬化の原因なのでしょうか? ひとつ考えられているのは「炎症」の関与です。血管の壁が傷ついてそこに炎症が起こると、炎症細胞が集まって動脈硬化が進行するのです。感染症の原因となる細菌やウイルスが、動脈硬化に影響しているという説もあります。動脈硬化の病変の中には、コレステロールや炎症細胞以外にも多くの細胞が含まれています。

最近注目されているのが、血管の壁の中にある平滑筋細胞という筋肉の細胞の変化です。今年の循環器疾患の専門誌に、動脈硬化を形成する筋肉細胞の変化を分析した論文が掲載されています。それによると、動脈硬化に関連する平滑筋細胞には、がんに非常によく似た遺伝子の変化が起きていて、実際にその細胞は制御不能で増殖し死ぬことがないなど、がん細胞にとても良く似た性質を持っていることが明らかになりました。

つまり、動脈硬化はがんの一種で、それが進行して制御が難しいのは、がんに近い性質を持っているからかもしれないのです。動脈硬化の治療は、これから大きく変わることになるのかもしれません。

(石原藤樹/「北品川藤クリニック」院長)

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