【バイタルエリアの仕事人】vol.41 一森純|カシージャスに憧れた守護神は間もなく33歳…「昔と今の30代は違うよ」「変化はマジで感じない」

攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第41回は、今季から再びガンバ大阪のゴールを守る一森純だ。

前編では、チーム状況から、昨季に期限付き移籍した横浜F・マリノスへの思い、JFLからJ3、J2、J1とあらゆるカテゴリーを通しての成長を尋ねた。

【前編】一森純|ガンバ躍進、日産凱旋で涙のワケ。JFLから全カテゴリーを経験、J1との明確な差は?

後編ではまず、少年時代に着目。好きな選手こそ、スペイン代表のレジェンドを挙げたが、海外に比べて日本のサッカーに多く触れているようで、セレッソ大阪ユース出身の32歳は「Jリーグファン」と自称する。

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イケル・カシージャスが好きでした。勝負を分けるプレーができる、勝利を手繰り寄せる選手なんですよね。特別キャッチが上手いかって言われたらそうでもないし、特別ハイボールに強いかって言われたらそうでもないけど、勝負を分けるようなポイントで、ビッグセーブやビッグプレーをする選手が好きです。

チームでいうと地元のセレッソやガンバ、それにマリノスも見ていました。榎本哲也さん、飯倉大樹さん、マリノス育ちで湘南ベルマーレなどでプレーした秋元陽太さんとか。自分と同じ背丈で、すごく参考になる選手たちだったので、マリノス育ちのゴールキーパーはすごく見ていましたね。

あと中林洋次さん。ファジアーノ岡山などで活躍された方です。そういう選手たちは見ていましたね。同じ180センチ前半のゴールキーパーを参考にしていました。

実際にマリノスでプレーした時は、キーパーコーチの松永成立さんから、ゴールキーパーとはなんぞやという部分をすごく教えてもらいましたね。

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カシージャスに憧れた少年時代から時は過ぎ、一森は7月2日に33歳の誕生日を迎える。

インタビューを行なったのは6月27日。「1週間後ぐらいですね」と伝えると、柔和な守護神は「1週間後!? 奥さんの誕生日が7月27日なんですよ。そのことばっかり考えていました」と笑みを浮かべた。そんな様子からも分かるように、年齢はあまり気にしていないようだ。

ただ、Jリーガーの平均引退年齢は25~26歳と言われており、すでにそのキャリアは一握りの部類に入っている。そうしたなかで、「ここまでのキャリアの点数」を尋ねた際には、力強い答えが返ってきた。

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100点満点です。その時々で「もっと上手いことやれたな」とかはあるんですけど、めちゃくちゃ人に迷惑をかけながらここまで来たので、今まで以上に頑張ろうと思ったら、家族とかを犠牲にして、もっと人に迷惑をかけてしまうことになります。それはできないので100点ですね。やれることはやり尽くしています。

年齢を重ねての変化はマジで感じないです。ホテルでメンバー表を見て「あっ、上から3番目やん」とかになって気付くぐらいです。体力の衰えがあるかと言えばそうでもないし、やっぱりヒガシ君(東口順昭)や飯倉さんを見てても全然…すごいなと思います。

朝起きるのがきつくなるとか、全くないですね。年齢を感じることがなかったので、サッカー選手としての終わりを感じたことも今まで1回もないです。本当に意識してこなかったですね。

今は栄養学やリカバリーのデータや論文が、昔と比べてすごく出ているので、その辺の感覚は皆さんも変えていってほしい部分ですね。昔の30代と今の30代は違うよっていう。

自分が若い頃は、33歳はマジでおっさんと思っていました(笑)。怪我しがちだなとか思っていましたね。

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バイタルエリア――。「vital」は英語で命を意味する通り、ゴールに近いそのエリアでの成否は、勝ち負けに直結する。

そんな重要な局面において、一体どんな心構えでいるのか。最後にそう尋ねると、一森はGKとして、守備時の意識から教えてくれた。

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バイタルエリアでのプレーは勝負を分ける場面です。色々な駆け引きや観察、ポジショニング、構えだったり、様々な技術を凝縮してシュートストップに繋げるのですが、一番大事にしているのは、やっぱりメンタリティの部分です。

「絶対にやらせない」とか、責任感や勇気を持つこと。例えば、相手と1対1の時に一瞬身体が浮いちゃうと、下が届かなかったりするんですよ。「怖い!」って思っちゃうと、キュって上がると思うんですよ。そうならないために常日頃から、責任感や絶対にやらせない気持ちを意識することで、バイタルエリアで活きてくると思っています。

自分たちのシュートチャンスは、余裕があって見れる時は見るんですけど、あんまり見ていないです。僕が見てようが見ていまいが、点が入る時は入るし、入らない時は入らないので。

今どこにボールがあって、どういうボールの質が入ったかを確認したり、クロスやシュートの後の展開を呼んで、後ろの選手の配置や枚数をコントロールしています。リスク管理ですね。

※このシリーズ了

取材・構成●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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