【社説】沖縄で米兵の性犯罪 情報伏せる姿勢は異様だ

 またしても沖縄で、米兵による性的暴行が相次ぎ発覚した。女性の人権を踏みにじる卑劣な犯罪で言語道断だ。

 在沖縄の米空軍兵が昨年12月に少女を誘拐し、自宅でわいせつな行為をしたとして不同意性交の罪などで3月に起訴されていた。また5月には沖縄米軍所属の海兵隊員が女性に性的暴行をした容疑で、沖縄県警に逮捕されていた。厳正な司法手続きを求める。

 重ねて許し難いのは、いずれの事件も県民に知らされなかったことだ。メディアの報道で明らかになるまで、県警は公表せず、米側から通報を受けた外務省も公表しなかった。被害者のプライバシー保護が理由だという。

 米軍基地が集中し、過度な負担を強いられた県民の感情を逆なでする行為に他ならない。プライバシーを守るのは当然だ。その上で、県民の安全を守るためにも事件を公にすべきだ。少女を襲った事件は起訴から3カ月以上たつ。情報を伏せる姿勢は異様だ。

 沖縄では日本本土に復帰した1972年からの集計だけで、米軍関係者による凶悪犯罪は600件近くに上る。性犯罪も絶えない。95年に小学生の女児が米兵3人に暴行された事件は、日米地位協定を盾に日本側が身柄を拘束できない問題点もあらわになり、国民の怒りは頂点に達した。その記憶は今も鮮明だろう。事件のたびに米側は綱紀粛正を誓うが、言葉だけなのは現状を見れば明らかだ。

 「強い憤りを禁じ得ない」と、玉城デニー知事は県民の怒りを代弁した。米軍は猛省すべきで、日米両政府は今度こそ実効性ある再発防止策を打ち出さねばならない。

 そもそも日米間では97年に在日米軍による事件事故の通報手続きに合意している。今回は通報基準に該当すると、林芳正官房長官は説明した。しかし、米側から通報を受けた外務省が防衛省に伝えず、沖縄防衛局を通じて受け取るはずの沖縄県に情報が届かなかった。米軍も県警も伝えておらず、それぞれ適切な判断だったとはいえない。

 今回なぜ、日本政府が県民に公表しなかったのかを検証すべきだろう。県に情報が入らなかった結果はあまりに不可解だ。

 振り返れば、4月に日米首脳会談があり、今月16日には沖縄県議選の投開票と、日米関係にとって重要な政治的なイベントが続いていた。これらへの影響を避ける「隠蔽(いんぺい)」だと勘繰られても仕方あるまい。自治体への通報の在り方を見直すよう求める。

 県民は基地に伴う多くの危険をも押しつけられている。米施政権下だった65年前のきょう小学校に米軍嘉手納基地のジェット戦闘機が墜落し、児童や住民ら200人超が死傷した事故が起きた。何ら変わっていない現実を今こそ直視すべきではないか。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡っては、政府は県の反対姿勢に耳を貸さずに工事を強行している。これ以上、県民の信頼を損なうことが続けば、安全保障体制への理解など得られはしない。

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