茨城県北3市、水害備え強化 対策本部や避難所訓練 昨秋の被害教訓

避難所開設訓練で段ボールベッドを組み立てる参加者=日立市本宮町

本格的な台風シーズンを前に、昨秋の記録的な大雨で被害を受けた茨城県北地域の3市は、水害への備えを強化している。対応の遅れを招いた反省を踏まえ、災害対策本部の立ち上げや避難情報の発令、避難所の開設といった初動訓練を相次ぎ実施。住民へのリスク周知にも力を入れる。

■日立

日立市は6月、市内全ての小中学校を会場に、市職員と自主防災組織が合同で、豪雨災害を想定した避難所開設訓練を行った。

市立宮田小(同市本宮町)では21日、宮田学区コミュニティ推進会防災・防犯部のメンバーや市職員ら約20人が参加し、段ボールベッドを組み立てたり、本年度新たに配備したスポットクーラーの接続を確認したりした。

終了後の意見交換では「最近は災害関連死が多い。避難所の環境改善を検討してほしい」「感染者への対応方法は」などの声が上がり、課題や対応方法を共有。同部長の山本朝男さん(69)は「昨年、線状降水帯の怖さを思い知った。地区の防災計画を推進していきたい」と語った。

昨年9月8日に台風13号の影響で線状降水帯が発生し、日立、高萩、北茨城の県北3市では河川の氾濫や住宅の浸水、土砂崩れなどが相次いだ。

庁舎が浸水、停電した日立市は6月18日、当時の気象情報に沿って災害対策本部の運営訓練を実施。危険度に応じて警戒レベル3の「高齢者等避難」や同4の「避難指示」を発令し、避難所開設の指示や広報手段などを確認した。

訓練後は水戸地方気象台の五味孝夫台長が市職員向けに講話。昨秋の大雨ではわずか2~3時間で1カ月分の雨量が降ったと解説し、警戒レベル(5段階)に対応する気象情報について「必ずしも段階的に発表されるわけではなく、一気に飛び越えて危険度が急速に高まることもある」と強調した。

小川春樹市長は訓練で「非常事態にしっかり対応できなかった反省がある。リアルな訓練を重ね、市民の暮らしを守ることに徹していきたい」と語った。

■北茨城

住民への啓発活動の動きも広がる。

北茨城市は7月、防災行政無線を使って家庭内で避難行動の確認を呼びかけたり、避難行動要支援者に電話連絡して注意を促したりする予定だ。要支援者の搬送訓練も行う。

5月には昨年の大雨で浸水被害があった箇所を記録した防災マップを作成し、市内全戸に配布した。市危機管理室は「風水害はある程度予想ができる。災害時に行動できるよう各家庭で準備してほしい」と呼びかける。

■高萩

高萩市も6月30日、昨秋と同じ関根川が氾濫したとの想定で総合防災訓練を行う。5月には水害リスクのある小中学校や特別養護老人ホームで出前講座を開き、避難方法や経路を再確認するよう求めた。

市は希望者に対し、新たに土のうの戸別配布も始める計画で、自力で保管庫に取りに来られない高齢者などに直接届ける。日立市も今夏から「土のうステーション」を開設し、各支所や消防署に専用の収納庫を設ける。

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