【コラム・天風録】サプリの習慣

 幼い頃、グリコのキャラメルを食べると元気が出る気がした。1粒300メートル。いっぱい入った栄養が体内で働くのだと。体にいい気がして大人になってもレモン50個分のビタミン、1日分の野菜の栄養が入った菓子や飲み物を選ぶ▲栄養豊富で健康にいい―。そんなイメージでサプリメントを取ることに抵抗がないのも子ども時分から慣れているせいか。とはいえ元々の英語は「補助、補充」の意味。頼り過ぎず、ほどほどの付き合いをしなくては▲小林製薬の紅こうじサプリを巡る健康被害問題は、サプリの愛用者に衝撃を与えた。調査分析は進んだと思いきや、再びの衝撃だ。摂取後に死亡した疑いは5人だったが、76人と新たに判明した▲5人は腎関連の疾患だった。一気に70人以上増えたのは、がんや脳梗塞などに調査対象を広げたため。原因が未解明なのだから被害を幅広く調べるべきだった。しかも急増したことを厚生労働省に報告していなかった▲後手の対応が続く小林製薬に「もう任せておけない」として厚労省が調査を直接管理する。健康被害を出していながら、公表に消極的とは。どんな論理が社内で働いたのか。隠蔽(いんぺい)体質と「診断」されても仕方ない。

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