佐久間由衣『ひよっこ』と『らんまん』で魅せた存在感と変化「朝ドラのオーディションは毎回受けていたんです」30代に向けての意気込み

佐久間由衣 撮影/冨田望

俳優なら誰もが夢見るNHK連続テレビ小説(通称“朝ドラ”)。その朝ドラの2017年前期に放送された『ひよっこ』に続き、昨年前期の『らんまん』にも出演を果たした佐久間由衣さん。モデルから俳優へ転向したタレントは数多いる中で、2017年に「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」新人賞、2019年には第32回東京国際映画祭で「東京ジェムストーン賞」、エル シネマアワード2019で「エル・ガールライジングスター賞」に選ばれ、俳優としての才能については早くから誰もが認めていた。俳優として確実にステップアップを歩んでいる佐久間さんにとっての転機とは?【第3回/全3回】

今回の『おいハンサム‼』シリーズは俳優・佐久間由衣にとってどういう位置付けになるのだろうか。

「『おいハンサム‼』での里香との出会いは、今まで携わってきた作品の中でも役者としてしては楽しめる役柄……そういう意味では新鮮でしたね。いままでの作品はシリアスだったり、少し肩に力が入るような準備が必要な役柄が多かったんですけど、『おいハンサム‼』に出会って、山口雅俊監督の演出を受けていると、出来るだけ肩の力を抜くことの大事さというか。力を抜きながらこういう面白い役を演れる……というのは、けっこう衝撃的な出会いでしたね。“こういうお芝居の仕方もあるんだ”ということに気付かせてもらいました」

朝ドラ『ひよっこ』に出演したことが、佐久間さんの俳優人生に大きな転機となった。

「やっぱり朝ドラに出たいという思いはありましたし、『ひよっこ』が決まるまでは毎回、朝ドラのオーディションは受けていたんです。でも、受からず、また受けて受からず……の繰り返しだったので、受かった時は目標にしていた夢が叶ったって感じでした」

昨年の朝ドラ『らんまん』にも出演していたのは記憶にも新しいところだ。

「やっぱり『らんまん』を観てくださる方の中には『ひよっこ』を観てくださっていた方もいると思ったので、その方たちに“『ひよっこ』で演じた時子ちゃんがお芝居している”って思われないようにしたいな、という思いが個人的にありました。なので、良い意味で“アップデートしてもらえるように頑張ろう!”というのは自分の中でテーマとしてありましたね。『ひよっこ』を終えて、『らんまん』までの間に携わった作品の中で得られたモノを出し切れたら良いな……って思って臨んでいました」

30代に向けての意気込み

そんな佐久間さんの俳優人生で大きな影響を与えた映画は『愛のむきだし』だという。

『愛の~』は親から愛情を受けずに育った若者たちをキリストの宗教観、暴力、新興宗教などを絡めて描いている。園子温が監督を務めた。

「満島ひかりさんと安藤サクラさんの素晴らしいお芝居、作品そのもののメッセージ性が強烈で、しかも上映時間が4時間ぐらいあって(笑)。“こんな世界があるんだな”って感化されて、お芝居をもっと頑張りたいなって思いがより強くなった切っ掛けとなった作品でしたね」

プライベートでは現在29歳。

「20代前半の後半とでは変わってきているのかな(笑)。でも、よりお芝居が好きになっている感じはあると思います。20代前半は、もうちょっとお芝居が上手になりたいとか、こういうスキルが欲しいとか。そういう自分がまだ持っていないものに対して、すごくコンプレックスを抱えていたんです。いま振り返ると、それが表に出てこないようにしなきゃって一生懸命になっていた時期もありました。でも、20代後半になった時に、そういうものを隠すのではなくて、全部提示したうえで皆さんに協力してもらった結果、お芝居に対してちょっと構えていたものが、そうじゃなくてフラットに向き合えるようになった気がします。もっと、みんなに頼る……頼らせてもらえる様になりましたね。それで、お芝居が好きだな~って感じる瞬間がすごく増えた気がします」

30代に向けての、俳優としての意気込みは……。

「変わらず、マイペースでひとつひとつやっていきたいというのはありますけど、年齢を重ねていくうえで、いただく役柄も変わっていくのは嬉しいですよね。例えば、母親役とか教師役とか、20代前半ではなかなか叶わなかった役柄を演じていける楽しみはあります。でも、30代になっても、40代になっても、初心を忘れずにコツコツやっていきたいです」

佐久間由衣は、俳優としてこれからも邁進を続けていく。

佐久間由衣(さくま・ゆい)
1995年3月10日、神奈川県生まれ。O型。T170㎝。2013年に女性ファッション誌『ViVi』の専属モデルとしてデビュー。2014年、映画『人狼ゲーム ビーストゲーム』で俳優デビュー。2015年、ドラマ『トランジットガールズ』でドラマ初主演を果たす。2019年に映画『“隠れビッチ”やっていました。』で映画初主演を果たした。主な出演作にNHK朝ドラ『ひよっこ』、『らんまん』、『彼女はキレイだった』、『最愛』などのドラマや『君は永遠にそいつらより若い』、『キングダム 運命の炎』、『ゆとりですがなにか インターナショナル』などの映画がある。

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