水田食い荒らす「ジャンボタニシ」捕獲器、環境負荷少ない誘引剤 新栄製作所が開発

ジャンボタニシを駆除する捕獲器「タニー・トラップ」を紹介する青木淳司社長=岐阜市日置江、新栄製作所

 樹脂金型メーカーの新栄製作所(岐阜市日置江、青木淳司社長)は、水田の稲を食い荒らす大型の巻き貝ジャンボタニシ(正式名スクミリンゴガイ)を駆除するプラスチック製の捕獲器を開発した。環境負荷の少ない誘引剤も自社開発し、地元の水田でテストを繰り返して効果を確認した。課題だった誘引剤の量産にめどが立ち、今後は販路の構築を進める。

 南米原産のジャンボタニシは水田や水路に生息する2~7センチの巻き貝。田植え直後の稲をよく食べ、各地で被害が出ている。食害で米の収穫量の減少につながり、農家も対策に追われる。

 開発に乗り出したのは15年ほど前。自身も米作りに携わる青木社長が危機感を抱き、ジャンボタニシの習性を研究。自社設備を使って、再生プラスチックを原料に使った箱形の捕獲器(縦30センチ、横16センチ、高さ10センチ)と、産卵させて卵を駆除するプレートを開発した。捕獲器の内部に入れる誘引剤は小麦粉と酒かすを混ぜて固形にした。量産には防除用医薬部外品製造販売のタニサケ(揖斐郡池田町片山)の協力を得ることができた。

 今年6月、田植えを終えた水田に設置したところ、多くのジャンボタニシが集まり、プレートにはピンク色の卵が産み付けられた。青木社長は「農薬が効かない耐性を持つ個体も多いと聞く。誘引剤の原料はいろいろと試したが、酒かすが一番よかった。在来種のタニシへの影響もなく、生態系保全になる」と力を込める。

 捕獲器の商品名はスパイが行う色仕かけによる諜報活動「ハニートラップ」に引っかけた「タニー・トラップ」。駆除用プレートは「タニー・プレート」、誘引剤は「タニー・フード」とし、印象的なネーミングで農家への浸透を目指す。

 新栄製作所は従業員5人の零細企業。自動車関連部品メーカーとの取引が中心となる中、新たな収益事業に育てる。販売網を持つ企業や農業団体と連携し、普及を進める考え。青木社長は「全国の農家の皆さんに使ってもらい、被害を減らしたい」と意気込む。

ジャンボタニシ捕獲器の回りに設置したプレートに産み付けられたピンク色の卵=岐阜市内

© 株式会社岐阜新聞社