夏バテに「ネバネバ食材」が良いといわれるのはなぜ? ネバネバ成分の正体とは 栄養士が解説

オクラ、納豆、山芋などネバネバ食材をプラス(写真はイメージ)【写真:写真AC】

暑い季節にはネバネバ食材が良いといわれます。確かに、食欲がないときでも食べやすい食感ですが、なぜ夏バテ予防におすすめなのでしょうか。また、ネバネバ食材といっても、オクラや山芋、納豆など、それぞれのネバネバの成分に違いがあるのか気になるところ。そこで、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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ネバネバの成分は食材によって異なる

暑いと、のど越しが良いそうめんなど冷たい麺類を食べる機会がつい多くなり、炭水化物に偏った食事になりがちです。夏バテ予防には、いろいろな食品をバランス良く食べるのが一番ですが、とくにネバネバする食品が推奨されるのは食べやすさと手軽さ、栄養メリットに理由があると考えられます。

そもそも、ネバネバ食材とひと言でいっても、そのネバネバの元となる成分はさまざまです。たとえば、野菜や海藻に含まれるペクチンやアルギン酸、フコイダンなどの水溶性食物繊維、納豆特有の酵素ナットウキナーゼがあります。これらは血栓を予防したり、糖質の消化吸収を遅らせたり、ナトリウムやコレステロールの吸収を抑制したりするなど、生活習慣病予防に期待できるものです。

ネバネバ食材の代表格といえば、オクラ、納豆、山芋。暑い季節の食卓に登場する機会が増える食品です。それぞれネバネバの正体と栄養について見ていきましょう。

オクラのネバネバの正体と含まれる栄養とは

オクラのネバネバ成分は、水溶性ペクチンなどの食物繊維です。胃の調子を整え、胃炎や胃潰瘍の予防に効果があるといわれています。また、血糖値やコレステロール値の上昇を抑制し、糖尿病や脂質性異常症などの予防が期待できます。

加えて、オクラは約90%が水分です。大量の汗で体内の水分が不足し、血液の流れが悪くなりやすい夏の水分補給に役立ちます。そのほかにも、体内で必要時にビタミンAに変化するといわれるβカロテンも多いのが特徴です。皮膚や粘膜を強くし、免疫機能を高める抗酸化作用も期待できます。体内の余分な水分や塩分を排出するカリウムも含まれるため、湿度が高くむくみやすい日本の夏こそ、積極的に食べたい食品のひとつです。

オクラのぬめり成分は熱に強いため、スープなどもおすすめです。切り方で食感も変わり、小口切りすると星形になり、粘り気が出るのが特徴。縦に2等分に切るとプチプチ食感が楽しめます。料理によって切り分けて楽しんでください。

納豆のネバネバの正体と含まれる栄養

納豆のネバネバは、納豆の発酵過程で納豆菌が産出するたんぱく質分解酵素、ナットウキナーゼによるものです。血液をサラサラにして、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などの原因となる血栓を予防する効果が注目されています。ただし、ワーファリンなどの抗凝固薬を服用している人にとって、納豆はビタミンKを多く含み薬の作用を弱めてしまうため、おすすめできません。

「畑の肉」といわれる大豆を原料とする納豆は、たんぱく質が主成分です。アミノ酸のバランスに優れ、効率的にたんぱく質を摂取でき、疲労回復の効果が期待できるでしょう。夏バテによる食欲不振で肉などをあまり食べたくないときも、納豆から良質なたんぱく質を摂取できます。

山芋のネバネバの正体と含まれる栄養

山芋のネバネバ成分は、糖たんぱく質といわれるものです。胃などの粘膜を保護し、胃潰瘍などの予防や血糖値やコレステロール値の改善が期待されています。

山芋はでんぷん分解酵素アミラーゼを豊富に含むため、生で食べることができ、消化が良いのが特徴です。蒸し暑い季節、不調になりやすい胃腸をいたわり、消化吸収を助けてくれます。アミラーゼは熱に弱いため、すりおろして生で食べるのが最も効果的です。だしで割るときも、だしが冷めてからにしましょう。

生の山芋を扱う際、皮膚にかゆみが生じることがあります。これはアクの成分であるシュウ酸カルシウムが原因です。シュウ酸カルシウムは酸に溶ける性質があるため、手がかゆくなったら酢水で洗うと良いでしょう。

食は体の資本。ネバネバ食材の栄養メリットを活かしながら、暑さを乗り切りたいですね。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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