父は技術者、子は料理人 越冬隊員 親子2代 南極の地へ 多賀さん(茨城・日立出身)「夢のよう」

第66次南極地域観測隊の越冬隊で料理人に任命された多賀高さん=千葉県柏市

茨城県日立市出身の多賀高(たかし)さん(50)=埼玉県川口市=が、第66次南極地域観測隊の越冬隊に料理人として任命された。日立製作所に勤めた父・正昭さん(84)=日立市東大沼町=も同隊の技術者として3度の越冬を経験しており、親子2代の隊員が誕生。約5カ月後の出発に向け「夢のよう。父を魅了した景色を見られると思うと興奮する」と期待を膨らませている。

国立極地研究所によると、同隊は1956年から南極の気象や海洋、氷床、生物などの観測や研究を続ける。隊員は研究者や技術者、料理人、医者など。第66次隊の越冬隊は、今年12月から2026年2月まで活動する予定。料理人は2人で、隊員31人分の食事を担当する。

高さんは1979年11月、正昭さんが観測船「ふじ」に乗って旅立つのを東京・晴海埠頭で見送った。南極を意識するようになったのはその頃からという。

南極と食を結ぶ思い出は、帰国した正昭さんが振る舞ってくれた同隊料理人直伝のステーキだった。食卓での話題も、昭和基地で交流した研究者や料理人にまつわるさまざまな逸話。同僚隊員が自宅を訪れたこともあり、高さんは「あれだけ話を聞かされれば、自分も行きたくなる」と当時を振り返る。

正昭さんから「広い世界を見てこい」と背中を押され、料理上手の母、節子さん(80)の影響もあり、料理人として南極観測隊員を目指そうと決意。高校卒業後は同隊の料理人を多数輩出した東條会館(東京)に入社した。その後、結婚式場の運営会社へ転職し、現在は千葉県柏市の結婚式場で料理長を務めている。

7月からは休職して同研究所に所属する。すでにメニュー検討を始めており「アイデアが広がって切りがない」。得意料理はフレンチだが、和食や中華料理なども幅広く取り入れる予定という。

「父たちは『現地での喜びは食事』と話していた。南極では料理で仲間を楽しませたい」。料理人になって32年余り。夢だった南極大陸で料理の腕を振るう日に向け、準備に全力を注ぐつもりだ。

父・正昭さん

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