中高年の就農支援 福島県鮫川村が県内初の独自制度 資金補助や技術研修 担い手確保、農地維持へ

 農業の担い手確保に向け、福島県鮫川村は定年・早期退職した中高年世代の就農を資金と技術習得の両面で支援する。村内で農業を本格的に始める50~65歳を対象に必要な資機材購入費を補助する他、地元の専業農家と連携した研修制度などのメニューを用意。意欲のある人材を農業に誘導し地域の基幹産業の活性化と農地の維持につなげる。村や県農業経営・就農支援センターによると、中高年世代に限定した独自の支援制度は県内で初の試みという。

 事業の仕組みは【図】、主な支援メニューは【下記】の通り。資金面の支援は農機や施設・設備などの購入費を対象とし、技術研修は専業農家の協力を得て無料で受けられるようにする。収益性の高い作物の選定や栽培方法、経営のノウハウなどを学ぶ。研修を受け入れた専業農家には3カ月以上の研修で研修者1人当たり日額2千円、1カ月につき3万円を上限に指導料を支給する。

 担い手の高齢化や後継者不足により村内の農家数は減っている。2005(平成17)年の農業センサスによると専業農家は69戸だったが、2020(令和2)年の調査では30戸減の39戸だった。新規就農者は2017年から今年6月までの7年余りで5人と少なく、新たな担い手確保策が必要となっていた。国などの新規就農者支援策が主に49歳までを対象としていることに着目し、そこから漏れる中高年世代向けの施策を立案した。「セカンドキャリア」としての農業に注目が集まっている点も考慮した。

 支援制度を使って就農した人には村農産物加工・販売所「手まめ館」の会員になってもらい、作物を販売できるようにする。生産から販売までを円滑にし農業に乗り出しやすい環境を整える。親世代が農業を営んでいる会社勤め等の村民の就農を促す他、村外からの希望者には農地バンクや農機具マッチングの制度を通して移住と参入を支える。

 就農3年後の年間販売額の目標を「50万円以上」と設定。課題となる一層の収益確保に向けては、技術研修などを通して農業者同士のつながりを創出し、首都圏向けに販売するなどの方向を模索してもらう。

 村の担当者は「基幹産業である農業の衰退は村の存続にも関わる。中高年世代も重要な戦力だ。多様な担い手の確保と育成・定着を実現したい」としている。

▶主な支援メニュー◀

■農業機械等購入費

2分の1(上限30万円)以内を補助。10万円以上の農業機械(スマート農機具を含む)が対象。

■施設整備費

2分の1(上限30万円)以内を補助。軽トラック、バックホー、倉庫、パソコンなどが対象。

※農業機械等購入費、施設整備費ともに中古品でも対象とする。

■村内の専業農家での研修(無料)

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