リメイクドラマ『スカイキャッスル』の現実世界 スプーン階級論・下車感…過熱する韓国の超セレブお受験

※画像は7月25日スタートの松下奈緒主演ドラマ『スカイキャッスル』の公式インスタグラム『@7_hisho_tvasahi』より

初回視聴率1.7%と低空飛行だったにもかかわらず、放送されるたびに徐々に話題を呼び、最終話では23.8%もの超高視聴率を記録した韓国の連続ドラマ『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』(2018年11月〜19年2月)。

韓国社会で過熱を続ける受験戦争と子どもの教育へと人生を捧げる母親たちの姿を描いた本作だが、7月25日から日本でも松下奈緒(39)主演でテレビ朝日にてリメイク版が放送される(7月25日から、毎週木曜日よる9時~)。

「高級住宅街SKYキャッスルに住む住民とその家族が、大学受験を舞台に繰り広げる人間ドラマが魅力の作品。韓国社会のリアルを描いていると、現地では大いに話題になりました。

23年の韓国の合計特殊出生率は0.72と超少子化社会に突入している。その一方で、子どもの受験熱は過熱するばかり。現に23年の小中高生の教育費の私的負担は27兆1000億ウォン(約3兆400億円)と前年から4.5%も増加。児童数は減っているにもかかわらず、教育市場は沸騰し続けているのです」(夕刊紙記者)

その熱は止まるところを知らず、「幼児教育市場までも、問題視されている」と本サイトの取材に対して話すのは『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社)などの著書があるフリージャーナリストの金敬哲さんだ。

「小学校に入学する前の幼稚園児が通う、英語幼稚園の月謝が平均120万ウォン(約14万4000円)を超えたと先日も韓国国内では話題になりました。入園するためにはテストだってある。それでも幼稚園児の6人に1人が通っているとも言われています」(金さん)

未就学児の教育にまで多額の教育資金を投入する家庭が増え続ける背景には韓国社会独自の考え、“スプーン階級論”があるという。

「スプーン階級論とは、親の出自や資産が子どもにも引き継がれるという韓国のネットスラング。教育だけが社会の中で固定された階層を逆転する武器になると信じられています」(前同)

■夏休みには短期契約アパートに家族で来て塾の特別授業を受ける――

韓国社会の一部はまさに、ドラマ『SKYキャッスル』で描かれている世界そのもののようだ。富裕層の子は、教育熱心な親から洗練された教育環境を用意されることで、その社会的な地位をも引き継いでいくというわけだ。ドラマの世界を地でいくような地域も、韓国の首都・ソウル市内にはあるという。

「江南(カンナム)区は名門高校や有名塾が揃っているため人気があります。夏休みにもなれば、地方から同地の塾の特別授業を受けようと、家族ごと短期契約アパートに引っ越してくる家族もあるほどです」(前出の金さん)

江南区の教育環境が整備されるほどに地域の地価も上昇。ハリウッドセレブの大邸宅が軒を連ねるロサンゼルスの高級住宅街ビバリー・ヒルズよりも地価が高いとも言われているそうだ。

「韓国で最も人気があるのは110平米前後の大きさの部屋。現代建設やサムスン物産といった有名建設会社が建てるブランドアパートは、江南区では最低3億円はします。なかには10億円以上する部屋もあるほどです」(前同)

これらのエリアではドラマの世界同様に、保護者間で火花を散らし合うような見栄の張り合いが繰り広げられているともいう。

「韓国では“下車感”という言葉があります。ベンツやBMWといった高級車からドライバーが降車すると周囲は振り向きますよね。この時に感じる爽快感を下車感と表現するのです。子どもが小学校に入学するからと、下車感の良い外国車に買い替える人もいるほどです」(同)

現に昨年、韓国国内で販売されたイギリスの最高級車ベントレーの数は810台とアジア地域でナンバー1だ。高まり続ける韓国国内での“セレブ子育てフィーバー”。一方では別の問題も深刻視されている。

「現在、韓国では子ども1人にかかる塾代などの教育費が、平均して月に43万ウォン(約5万円)を超えると言われています。子どもが2人いれば塾代だけで月に10万円。韓国の平均年収は410万円ほどですから、子育てに掛かる金銭的な負担は非常に大きい。あえて“子どもを持たない”という選択をする夫婦も増えています」(同)

大学受験が国民的な関心ごととなり、その過熱する世界を描いたドラマはメガヒット――だが、日本以上に少子化が進んでいると言われる韓国の未来は――。

© 株式会社双葉社