地域ねぶた存続へ 青森・高田地区など4地区連携 山車や人出融通

地域ねぶたの先陣を切って行われた高田ねぶた実行委の夜間運行=29日午後7時33分、青森市高田地区
高田地区のほか3地区の有志も参加して運行を盛り上げた=29日午後6時半

 青森市の「地域ねぶた」の運行が29日、高田地区を皮切りに始まった。人手不足などを理由に運行団体が減少する中、同地区は今年から山車や資材、人手を他の地区と融通し合う「広域連携」のモデル作りに取り組んでおり、この日は連携相手の荒川、横内、幸畑地区の有志も参加。威勢のいいかけ声で沿道を盛り上げながら、伝統を紡いでいくためのヒントを探った。

 地域ねぶたは現在、市内の町会などが主体となって運行しているが、山車の作り手や引き手、ハネト、はやし方の不足のほか、資金面などの課題に直面。コロナ禍も追い打ちをかけ、運行団体の数は減っている。

 地域ねぶたの存続に危機感を持った高田地区など市内4地区の有志は3月、「青森市地域ねぶた振興協議会」を発足。人材派遣や山車の貸し出しなどの支援体制を確立し、他の地区にも広げていくため、今夏は実際の運行を通して派遣人数や予算面などの課題を検証することにした。

 29日、高田ねぶた実行委員会(高坂次男会長)の運行には高田地区以外の3地区の有志20人弱を含む約200人が参加。日中に続いて行われた夜間運行では、第7代ねぶた名人・竹浪比呂央さん(64)が手がけた竹ねぶた「曾我五郎と御所五郎丸」、高田小学校や高田保育園の園児が制作を手伝った子供ねぶた「龍王譚(たん)」の2台が約2.5キロを練り歩いた。

 ろうそくが揺らめく山車の明かりが夜空をうっすらと染める中、各地区の名前入りのはんてんやちょうちんが隊列を彩った。太鼓を載せた台車を他地区の有志が引っ張り運行をサポートする光景も見られた。

 ゴール地点の「縄文の学び舎(や)・小牧野館」では、山車を燃やして、悪霊退散を願う高田地区恒例の「ねぶた炎浄」を実施。昨年制作の子供ねぶた「陰陽師(おんみょうじ)」が炎に包まれると、参加者から歓声が上がった。運行に参加した荒川中1年の間山晃喜さんは「5月から太鼓の練習をしてきた。しっかりたたくことができた」と胸を張った。

 他の3地区でも9月にかけて運行を実施する。同実行委の後藤公司事務局長(48)は「山車や資材の貸し出しなどにかかる費用や、人手が何人必要なのかなどを検証して、来年はマニュアル作りに取り組みたい」と説明。幸畑地区から参加した張山英和さん(49)=幸畑団地地区まちづくり協議会事務局長=は「互いに連携を深めることが地域の衰退を防ぐことにつながる」と意義を語った。

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