憎悪に満ちたメッセージ――コパ・アメリカに巣くう人種差別問題に、アメリカ代表MFが心痛「ソーシャルメディアはどこを見ても有害だ」

アメリカ代表のMFタイラー・アダムスが心を痛めている。現地メディア『FOX SPORTS』が報じている。

大学フットボール&サッカーアナリストのレイケン・リットマン氏が寄稿した記事で、自国開催のコパ・アメリカを戦うホスト国の人種差別問題を取り上げられた。

「人種差別は、月曜日のグループステージのウルグアイ戦に向けたアメリカ男子代表チームの準備を曇らせている。この試合は、チームにとってコパ・アメリカの最終戦となる可能性がある。そして木曜日のパナマ戦での敗戦後、アダムス氏が『有害』と呼ぶソーシャルメディア上で、アメリカの選手たちが憎悪に満ちたメッセージを受け取ったという残酷な事実が、彼らの集中力を損なっている」

土曜日の記者会見で、アダムスは「個人的には、この件についてどこから話を始めたらいいのかさえ分からない」と心境を吐露する。

「現時点では、普通のこと。普通のことなんだよ。良い試合どころか、悪い試合をした後でソーシャルメディアに何も投稿しないなんて、ありえないと思う。

だから私個人としては、ソーシャルメディアは使わない。どこを見ても有害であるという事実だけが理由だ」

パナマ戦は1-2で敗れた。18分にFWティモシー・ウェアが一発退場。先制点を奪ったものの、10人のチームは逆転負けを喫した。

記事では、「ウェアとチームメイト、同じく黒人選手のクリス・リチャーズ、フォラリン・バロガンらは、それぞれのソーシャルメディアのアカウントで人種差別的なメッセージの標的となった。パナマ戦で唯一の得点を決めたバロガンは、どのような虐待を受けたかを示すため、そのメッセージを自身のインスタグラムに再投稿した」と記す。

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こうした事態を受け、アメリカサッカー連盟(USSF)は声明を出した。

「このような憎悪や差別的な行為は絶対に許されない。容認できないだけでなく、私たちが組織として掲げる尊重と包括性の価値観に反する」

USSFは今回の一件を南米サッカー連盟(CONMEBOL)にも報告。同連盟は「あらゆる場所、あらゆる機会における、特にソーシャルメディアのアカウントに隠れた不寛容な態度」と非難している。

リットマン氏はさらに、「これはコパ・アメリカで起きた最初の人種差別事件ではない」と伝える。

「カナダのディフェンダー、モイーズ・ボンビトは、開幕戦でアルゼンチンに0-2で敗れたゲームで、リオネル・メッシにタックルしたことで標的にされた。カナダサッカー連盟は声明を発表し、この件についてCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)およびCONMEBOLと連絡を取っている」

一連の問題に対し、アダムスは強く主張する。

「私たちのチームの選手たちが、明らかにそのような目に遭ったことは残念です。カナダの選手たちも同様です。サッカーは誰にとっても多くのポジティブな瞬間をもたらすものなので、サッカー界でこのようなことはまったく不必要です」

現状を看過できない。「誰もが様々な理由でサッカーを愛していますが、私たちがこのようなことがサッカー界に忍び込むことを許してしまったという事実は、本当にひどいことです」と訴えた。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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